烏と林檎
黎明
烏と林檎
綺麗な
羽毛が風で
林檎は穏やかな口調で言った。
「私を食べるのかい、烏さん」
林檎は
「この先、生きていようが、死んでいようが変わらんものだよ。到底、こんな体さ。
林檎の声の響きは
「
烏には林檎が孤独感をなんとか
林檎はさらに続ける。
「私がずっと未熟な頃、枝に下がりながら、よく自分が空を飛べればなぁとよく思ったものだよ」
林檎は懐かしそうに言いながらも、やはり言葉には悲哀の念が籠っていた。
「それはなぜですか?空を飛んだって何も得られないですよ。ただひたすらに風を切って進むだけです。面白さの欠片もありません」
珍しく烏は口を開いた。林檎の話に納得がいかなかったからだ。
林檎は烏の言葉を優しく否定する。
「それは君が鳥だからさ。君は飛ぶことに慣れてしまっているからそう思うんだろうね。でもね、飛べるっていうのは誇っていいことなんだよ。君たち鳥類にしか神は翼を授けなかったんだからね。ようするに君は選ばれた者の一人ってことさ。君は君だから特別なんだよ」
いつの間にかあたりは夕闇に包まれていた。
烏は林檎を食べるのが、嫌になった。どうにかして林檎を食べずにおわれないだろうか。烏は考えた。
だが様々なリスクを考えると、うまく纏まらなかった。
「最後に夢が叶ったよ。来世は君と一緒に空を飛びたいな」
林檎は静かに言った。林檎は完全に死を覚悟していた。
この烏になら食べられてもいいと思った。
烏は決心した。烏は川の横に降り立った。
「自分はただの未熟者です。手にした獲物に情をかけ、食べることも出来ない。だから、あなたは違う世界をもっと見てきてください。私は一人前になればあなたを探しにいきます。必ず見つけます」
烏はさらに続けた。
「あなたと同じで私も生きる意味がわかりませんでした。ですが、あなたの言ったように翼を持つことに誇りを抱き、自分は自分らしく生きることが大切だと学びました」
林檎は黙って、烏の話を聞いていた。
「私はあなたが生きる意味とあなた自身を見つけます」
それから烏は林檎を優しく
林檎はなにも言わなかった。烏がやることに身を
烏の抱いた射幸心はすっかり崩れていた。
ゆっくりと羽を広げ、烏は自分の立派な双翼を見て微笑み、翼を羽ばたかせた。
烏の濡れ羽色の体は闇に溶け、
烏と林檎 黎明 @reimeinet
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます