ロクデナシ


「ウォッカ、プリーズ」


「……うるせぇよ」


ニーナ、お前は相変わらずのアル厨だな。そんなことを思いながら、俺もウォッカを飲み干す。


リドラーが退職して、3日が経過。この3人娘に罪悪感などなく、むしろ、なんでやめさせちゃったんだろうと俺に不平を言う始末。


「……マギ、大丈夫?」


「大丈夫? 泣く泣くリドラーという貴重な戦力を、お前らろくでなし3人娘のせいで、断腸の想いで退職させて、それでお前らろくでなし娘に責められてやりきれない想いを浮かべながら酒に溺れてる状態を大丈夫とするなら、ああ大丈夫だね!」


「ウォッカちょうだい」


「うるせーバーカ!」


なんなんだよこいつ……デリカシーのかけらもないじゃないか。


そんな中、聖戦士フリックさんが帰宅。いつものように記者たちに追いかけ回されながら、子供たちから迷子呼ばわりされながら、よく、自我を保っていると思う。


「マギ、とうとう勇者の情報が入った」


「えっ、本当ですか!?」


「ああ、記者の1人が本当に探してくれたみたいで。近くにいるから、今、手紙を出してきてもらえるようにお願いしてきた」


「よかったですねぇ」


心の底からそう思う。全世界から笑い者にされて、結果、勇者も見つからずでは、さすがに救いがなさすぎる。


「これで……魔王を倒して……必ず……俺は……」


「……」


最近、この手のつぶやきが多い。酒の量も増えたし、正直心配な状態ではあるが、勇者と無事合流できれば、まぁ心も持ち直すだろう。


「よかったね、フリックさん」


ニコッとニーナが笑いかける。


「あ、ああ。ありがとう、君ともいろいろあったがーー「で、報酬は?」


!?


「お、お前……フリックさんから報酬取る気か?」


「当たり前でしょ。テレサのおかげで勇者は見つかったわけだから。間違いなく成功してるでしょ」


「お前……人の血は流れているのか?」


恐ろしく精神的苦痛を受けてるフリックさんに……なんてことを。


「マギさん……もういいよ」


あきらめたようにつぶやいて、彼が財布から金を取り出す。


「フリックさん……」


「ニーナ、わかった。報酬を渡そう。でも、これだけは覚えておーー「やりー、ワイン買ってきまーす」


シュタタタ。


「……」


足早に去っていくアル厨を見つめる、フリックさんの姿ったら、なかった。













2日後、勇者から、『恥ずかしいからもう関わらないでくれ』と、フリックさんに手紙が届いた。




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聖母というかママ 花音小坂(旧ペンネーム はな) @hatatai

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