ここは荒野の花畑

結城藍人カクト

ここは荒野の花畑

 おかしいな、いつオアシスなんてできたんだろう?


 ここは、不毛の荒野だったはずだ。


 ほんの二年前、新たな金鉱脈の発見と共に、一攫千金を夢見る冒険者たちがむらがった約束の地。


 でも、現実は過酷だった。そこは実際には不毛の荒野でしかなかったんだ。冒険者たちが交流する酒場のひとつすら無い。ギスギスした空気がただよい、ほかの冒険者とは、会話すらできなかった。


 金鉱なんか、一部の恵まれたヤツが独占するだけだった。その利権争いは不毛を極めた。不正がはびこり、国の関与まで疑われた。


 それを批判した抵抗運動は、あっさりと弾圧された。美しき首謀者は追放され、いずこへともなく去った。


 あきらめのムードが漂い、夢破れた冒険者たちは去った。残されたのは不毛の荒野だけ。そのはずだった。


 それなのに、二年ぶりに足を運んでみればどうだ? 小さいとはいえ、花畑がいくつも広がってるじゃないか。見たこともない花が、いくつも咲いているじゃないか。


 金なんてどこにも転がっちゃあいない。だけど、花畑で楽しそうに花の世話をしてる人たちは、そんなことを気にしちゃいない。


 会話が無いなんて、どこの世界の話だ? 小さな花ひとつを見ながら、楽しそうに会話してるじゃないか。みんなで自分の育てた花を持ち寄って品評会をしてるじゃないか。新種の花を育てようと、研究会を開いているじゃないか。


 ああ、あっちの方じゃあ、まだ金鉱脈を探してる冒険者もいるな。あっちは、相変わらず利権争いの真っ最中だ。ご苦労なことだ。


 だけど、そんな金の利権なんか気にもかけないで、こうやって花を愛でることを楽しんでいる人たちもたくさん居るじゃないか。


 いつから、こうなったんだろう?


 いつから、こんな楽しそうな場所になったんだろう?


 いいなあ、この長閑のどかな雰囲気。


 まあ、たまには金を探しに行くのもいいさ。もしかしたら、金の欠片のひとつぐらいは拾えるかもしれない。


 だけど、せっかくこの地に来たのなら、この長閑のどかさを、周りの花好きな人たちとの交流を楽しもうじゃないか。


 さて、ここらでひとつ、私も自慢の花を見てもらうとするかな。


 すみませーん、ちょっと私も仲間に入れてくださいな。この品評会のテーマは何ですか? え、「カクヨム二周年」? それじゃあ見てくださいよ、この花はですねえ……

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