第1話 仲間とともに

※プロローグの続きになります。



「ってわけでここにいたんだったよな?」


「そうです!」


「そうです!っじゃないだろ……。

ルア、お前の責任もあるんだぞ?

分かっているのか?」


「わ、分かってはいますが……」


「ん?なんだ?不満そうだな。」


「いや、このゲーム、身体本体もゲームに取り込む仕様でして……その……、つまり、食べ物を食べなくても意識さえゲーム内にあれば生きていられるんですよね。」


「何がいいたいんだ?」


「つまり……死なないから焦ることないですよね〜って話です。ぶっちゃけ慣れてきたんじゃないですか?」


「ま、まあ……1ヶ月もこっちにいるからな……嫌でもなれるわな。」


「でしょ?だからむしろこっちの世界の方が楽なんじゃないですか?」


「ま、まぁ……そうなんだが……。

巻き込んだのが俺だけならまだしもだな、2万人も巻き込んだんだ。迷惑極まりないぞ?それに、ティアとレイムにも迷惑かけてるわけだし……。」


「そ、そうですね……。」


ゲームに閉じ込められてから1ヶ月が経ったが結局抜け出す方法は見つからなかった。

だが、2人だったパーティにティアとレイムの2人が加わり、賑やかになってきた。


「カイト、何か言った?」


「いや、何でもない。」


「何でもないってことはないでしょ?」


いつものようにレイムが突っかかってくる。

顔はいいが口が悪い。それにまな板だ。


「ただ、ルアが迷惑かけたって話だよ!お願いだからつま先踏むのやめて!地味に痛い!」


仕方なさそうにレイムは足をどける。


「だ、大丈夫ですか?回復しますね!」


小柄なティアが地味に減っているHPを回復してくれる。

ティアは実年齢は分からないが多分かなり年下だ。カイト的にも慕われたいしお兄さん的立場に居たいと願っている。


「ふぅ〜、たまにはストレス発散しなくちゃやっていけないわよ。」


「お前のどこにストレスが溜まってるっていうんだよ……まな板の癖に。」


「あ?カイトこそ小さいモノの癖に!」


「見たことあんのか?」


「ないわよ!形すら知らないわよ!

てか、何言わせてんのよ!」


「知らねぇよ!勝手に言ってるくせに!」


「はいはい、2人とも喧嘩しないでくださいね。仲良く仲良く♪」


ルアが仲裁に入ってくれた。


「くそっ!ルアがそういうなら……」


「ルアちゃんが言うなら……」


あぶない、あと少しでレイムの持つ杖から爆裂魔法が炸裂するところだった……。

杖の先端光ってたし……。


「ほら、お兄ちゃん、見えてきましたよ。」


ルアが見つめる先には小さな街があった。


「あれがへポムの街か。」


「あそこに伝説のマークペンがあるのですね。」


「そういう設定なのよね?」


「そのはずですが……。」


ゲームを作った本人であるルアでさえも分からないのは、このゲームが管理者が定期的にゲームを管理しない場合、搭載されたAIによって自動でストーリーやオブジェクトが生成されていくシステム、『ルアPGプログラム』が使用されているからだ。


4人は街に踏み入れた。古びた建物にも見えるものが多いが、別に壊れているわけでもなく、むしろしっかりとした石造りだ。


「雰囲気のいい街ですね。」


「ああ、小さいがそれがまたいいな。」


「そう?あたしは住宅街の方がマシだと思うけど……?」


「空気読めよ……。」


カイトは呆れてため息をこぼす。


「でも、ここに来たのは私の要望だし、感謝してるわよ。」


そう、この街に来たのはレイムの要望だ。

どうやらここに伝説のマークペンがあるらしい。レイムはそれが欲しいのだとか……。


「今更だけど、仲間募集の時に選考はちゃんとすべきだったな。」


「え?私に何か問題がありましたか?」


ティアが心配そうに聞いてくる。


「いや、ティアはいい!可愛いし、頑張り屋さんだし!問題はあちらの方だ……。」


軽蔑するような、ティアに合わせた目線からカイトはレイムをみる。


「な、何よ!私じゃ不満?どんな魔法も使いこなす天才だってのに?」


「ま、力の点はよしとしよう……。

問題は詠唱時間と性格だ。」


「ど、どういう意味?」


「ま、俺が言えたことではないが言っておく。レイム、お前は今まで戦闘において、技を使ったことがあるか?」


「な、ないわよ!てか、あんたもでしょ!」


「ああ、そうだ。俺もお前も戦闘で攻撃したことが1度もない。それはなぜだ?」


「な、なぜ……?それは……。」


「わかっているだろ?ルアが強すぎるからだ!」


「た、確かに!いつもルアちゃんがフルボッコにしてたわ!」


「俺は近距離型だから敵に詰め寄る必要がある。お前には魔法の詠唱時間がある。」


「それを何とかしない限り、敵に触れることすらできない……!?」


「そうだ、その点ルアは管理者権限でステータスのアップ、複数体への攻撃可能、遠近両用攻撃型の格の違いを持っている。勝てるわけがない!」


少しヤケになって大声を出してしまい、街の人に見られてしまったが気にしない。


「しかし、俺達も敵を倒せないほど弱いわけじゃない、当てれば倒せる。」


「でも、スピードが……」


「そこでだ!こんなものを見つけてしまった!」


カイトが差し出したのは1枚のチラシ。

そこには、


「ん?『優勝賞品は速さのタスキ!参加はへポムの街、中央体育館まで!』ですって?」


「ああ、これを付ければスピードが上がる!詠唱時間も減る!しかも2本セットだ!」


「行きましょう!すぐ行きましょう!」


「ああ、まるで俺たちのためにあるような大会だ。運良く今日受け付け、今日開催なんてな!」


「じゃあまずはルアちゃんには悪いけれど、別行動になるようにして、参加受付に行くわよ!」


「ああ!バレたら絶対に参加するって言い出すからな……、あいつがいたら勝てるわけない。」


2人は遥か前を歩くルアとティアに駆け寄る。


「ねぇ!ふたりとも!」


「なんですか?レイムさん。」


「今、カイトと話したんだけど、伝説のマークペンってどこにあるか分からないのよね。だから2手に分かれて探さない?」


「いい考えですね!

じゃあ私はお兄ちゃんと―――――――」


「ダメ!」


いつものようにカイトに擦り寄ろうとするルアを止めるレイム。


「な、なんでですか?」


「わ、私が……今日は私がカイトと一緒がいい!」


「そ、そうなんですか?お兄ちゃんを取られるのは嫌ですが……お兄ちゃんが好かれているなら、妹の私が引くしかありませんよね。」


意外にもあっさり離れたルアはティアと手を繋いだ。


「では私はティアちゃんと探しに行ってきます。」


「ああ、よろしく頼む!」


手を振って別れ、2人が見えなくなってから……、


「ふふふ、意外にも上手くいったわね。」


「中央体育館は地図によると若干西側なんだよな……、ルア達、西側に行っちまったぞ?」


「急いでいけばバレないわよ!ルアちゃん達もそこまでは探しに来ないでしょ。」


「そうだな、今のうちに参加してこようぜ。」


駆け足で中央体育館に向かった。



「エントリーが完了しました!

控え室へどうぞ。」


受付嬢にそう言われて控え室へ入る。


「てか、何の大会なの?」


「……確認してない。」


「どんなのかも分からないのにエントリーしたの?馬鹿じゃない?」


「お前だって確認しなかっただろ!」


「チラシに書いてないわけ?」


「うーん、書いてあった、が……」


「ん?どうかした?」


「お前、頭はいいか?」


「悪いほうよ?言わせないで!」


「いや、この大会……」


レイムがチラシをのぞき込む。


「「スペシャル神経衰弱!?」」


「スペシャルって何よ!神経衰弱さえもできない私にその上を要求するの!?狂ってるわ!」


「今のお前が1番狂ってるぞ?だが、気持ちはわかる。」


「エントリー者が満員になりましたので参加者の皆様は会場に向かってください。」


受付嬢が扉を開いて声をかける。


「や、やるしかないか……」


「レイム魂、見せてやるわ!」


2人はやる気満々、同時に火をつけて会場に向かった。


……5分後……


「負けた……完敗だ……」


「あんたなんかまだマシよ、3組取れてたじゃない。私なんて全部持ってかれたわよ。」


このゲーム、ルールが特殊で機械によって示されたマークの組しか数字があっていても取れないのだ。♡と♤が示されたらそのマークの組み合わせでなければ意味が無い。

難しすぎる……。


虚しくも一回戦敗退……。

仕方なく観客席に着く。


「ん?あれって……」


「ん?どうかした?」


「ほら、奥から2番目と3番目の組、ルア達じゃないか?」


会場を見てみるとそこにはルアとティアがいた。

どうやら2回戦に勝利したようだ。

結果はルアが54枚対0で圧勝、

ティアが28枚対26枚で勝利したようだ。


「俺たち、ティアにさえ負けてるんだな。」


「ま、ティアちゃん、天才だから……仕方ないわ。」


ティアは調合、錬成などが機械を使わないでもできる極小数の役職につくほど天才で非戦闘型だから戦いはしないが戦術はよく知っている。

きっと26枚も取られたのはバトルの台がティアの身長よりも高いせいだろう。

まず、カードが見えていないのにどうやってひっくり返したのか、不思議だが……。


第3試合も凄かった。

ティアは相変わらず台の下から手を伸ばしてひっくり返す。32対22で圧勝。

ルアも完封勝ちだ。


そして準決勝。

係の人がやっとティアに台を渡してくれたのだが……。


「た、高いの怖いです〜」


50cm程の台なのだが、ティアにとってそれは大きいものなのだろう。

足が震えている。


「あー、恐怖で頭が回ってないな……。」


ティアは正解のカードの隣をとってしまったりで結局14対40で負けてしまった。

ルアはというと……


「持っている力は使っていいんですよね?」


「はい!スキルでも何でも!」


係の人に質問をしながら悩んでいるようだ。


「じゃあ使わせてもらいますね。

管理者権限!NTBRネタバレ!」


「使いやがった!あいつ、使いやがった!」


勝利のために管理者権限にまで手を出してしまったルア。だが、おかげで全てのカードのマークがルアにのみネタバレされてしまい、残りが全部ルアの元へ……。


結果は48対6で圧勝。


(相手の人、よく頑張った!6枚も取れたんだ、自分を褒めてあげて!チート相手に6枚も取れたんだ、祝杯だ!)


心の中で落ち込む相手選手を励ます。


「次が決勝ね。」


「ティアに勝った男だからな……、手強いぞ。」


「あれ?ルアちゃん、なんか言われてるわよ?」


見てみるとルアに係の人が何かを囁いている。


「え!管理者権限はアウト?次から使うなと?そんな……」


どうやらさっき使った管理者権限は許容範囲ではなかったようだ。


「いや、使わなくても勝てるほどの力があるだろ……。」


落ち込むルアに遠くからツッコミを入れる。


ついに決勝が始まった。

だが、勝敗は一瞬でついた。


「じゃあ使わせてもらう。スキル!BRBRバレバレ!」


「ネーミングセンスが皆無!?」


男は次々にカードを当てていく。


「ち、チートだ!」


だが、スキルは許容範囲なので止められない。過半数を取られて惜しくも準優勝だ。


「悔しいです……。」


大会後、落ち込むルアを励ます。


「でもルアさん!目的は達成しましたよ?」


3位の景品のお菓子詰め合わせ(大)を持ったティアが言う。


「あ、そうでした!2位じゃないとダメだったんです!」


「ん?なんで?」


「これです!」


ルアは賞品を取り出す。


「マークペン?」


「はい!伝説のマークペンです!」


どうやら賞品が伝説のマークペンだったようだ。


「どうぞ、レイムさん♪」


「あ、ありがとう……。」


レイムが受け取った伝説のマークペンは見た感じ、普通だ。


「な、何が伝説なんだ?」


「これ、絶対に真っ直ぐに線が引けるんだって……。」


「必要か?」


「いや、いらないかも……。」


「じゃあ何のために……。」


「ま、まぁ、男子によくあるやつでしょ?伝説って聞くと欲しくなるやつよ!伝説の剣とか、勇者とか?」


慌てて弁解するレイムにため息をこぼす。


「あ、これもレイムさんに……」


ルアが渡したのは黒い本。


「私はいらないので……。」


「ん?嫌な魔法書?どんなだろ……?」


レイムは魔法書を開いてみる。


「……特定の人の頭の上だけに雨を降らせる魔法、嫌な奴をつまづかせる魔法、嫌いな奴の耳元で嫌いと言ってもバレない魔法……?」


「本当に嫌な魔法の書だな……。」


「ま、一応持っとく。」


「なんで!?」


「あんたに嫌がらせするためよ。」


「さ、最低だな……。」


「褒め言葉として受け取っとくわ。」


一瞬の沈黙が訪れる。


「ところでお兄ちゃん?」


なんだかルアの表情が強ばっているような……。


「な、何でしょう……?」


「なぜ、ここにいるのでしょうか。ここは中央体育館ではありますが街の西側に位置していますよね?東側を担当されたはずの御二人がなぜここにいるのでしょうか。」


笑っているが内心は怒りの炎がメラメラと燃えているに違いない。


「まさか……」


ルアは詰め寄り、目を逸らすカイトの視線を逃がそうとしない。


「私に嘘をついたのですか?」


ギクッ!


「ちちちちちちがいますですよ?」


「明らかな動揺、泳ぐ視線、大量の手汗と時折、レイムさんの方を確認する仕草……、お兄ちゃんが嘘をついている時に出る症状ばかりですね。……ね?お兄ちゃん?」


可愛らしい妹フェイスが一瞬だけ鬼嫁に見えた気がした……。

それから少しの間、記憶がない。


「さ、さぁ、捜し物見つかったし、

次の街へ―――――――」


「レイムさんも、ですよ?」


誤魔化して逃げようとするレイムを管理者権限で動けなくする。


「お兄ちゃんと一緒に私を騙した罰ですから、ふふふ……」


「嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


路地裏に引き込まれていくレイムをティアは笑顔で見つめていた。


「本当に仲がいいですね♪」



記憶の断片では体が動かないまま、ルアに宿屋まで引きずられて言ったような気がする。

気がつくと動けるようになっていて、ひとり、ベッドに寝ていた。


部屋から出てみると丁度ルアがお風呂に入りに行くところだった。


「あ、お兄ちゃん、起きたんですね。」


「ああ……一生、目覚められないかとおもったけどな……。」


「そうですか、この宿屋、温泉があるらしいので堪能してきますね♪」


カイトの言葉を軽く受け流したルアはウキウキ気分で歩いていった。


「あ、カイト……おはよう。」


後から声をかけられ、振り向く。


「あ、レイ……ム?ど、どうしたんだよ!」


レイムは手錠によって後ろで手を拘束されていた。


「いや、ルアちゃんがしばらくはそれで反省しなさいって……。」


「俺はまだマシだったのか……。」


自由に動かせる自分の両手を抱きしめたい。


「あ、私たちの部屋はカイトのやつの隣だから。」


「そうか、サンキュ。」


レイムは急にニヤッと笑い、


「教えたからって襲いに来ないでよ?」


「い、行くわけないだろ。」


「ま、2人部屋だから誰かそっちに行くと思うけど……。」


「そ、そうか……。」


少し頬が緩んでしまう。

1人というのは少し寂しいし……。


「な、なに期待してんの?心配しなくても多分、ルアちゃんが行くわよ。」


「そ、そうか……。」


ルアとはゲームの外ではルアが中学生になってからでも、よく一緒に寝てたし、多分、今でも緊張したりはしないだろう。

いや、別に一緒に寝ようとか言ったわけじゃない。ルアが勝手に布団に入ってきたんだ。


ま、まぁ……居心地よかったけど……。


「何ニヤけてんの?気持ちわる!」


「言葉遣いには気をつけてください、かなり傷つきました。」


「あー、確かにHPが減ってるわね……。」


このゲーム、どうやら精神的ダメージまでダメージに加算されてしまうようで……。

意外とツラい……。


「じゃあ私もお風呂に入ろっと♪」


レイムはそのまま走っていってしまった。


「あれ?あいつ、どうやって体洗うんだ?」


そんな疑問はすぐに消えてしまった。

なぜなら、隣の部屋からティアが顔を出したから。


「か、カイトさん……。」


「ん?どうかしたか?」


なんだかティアの表情が暗い。


「あの…………ゴニョゴニョ。」


ティアはカイトの耳元で小声で囁く。


「そ、そうか……わかった。」


「あ、ありがとうございます!」



というわけで今、部屋風呂のドアの前で座っている。


どうやらティアは、誰も近くにいないのが怖いらしく、風呂に入っている間、ドアの前にいて欲しいのだと……。


「絶対に覗いちゃダメですよ?」


フリかと思うくらい何度も言われたが、くもりガラスのドアを挟んで、幼女が素っ裸で風呂に入っている……。

覗いちゃダメなんてどんな拷問だよ!

肌色の影が揺らめいているのがくもりガラスを通して見える。このドアはなぜか鍵がついていない。ついつい開きたくなる衝動を抑えるのに必死だ。


「カイトさん、いますか?」


何度も聞かれて何度も答える。

よっぽど怖いのだろう。だが、そんな女の子らしいところにときめいてしまうカイト。


と、そんなことを考えていると途端に風呂のドアが開く。ティアが顔だけのぞかせている。


「あ、もう上がる?」


「あ、はい、お先です。」


「……ん?」


「あ、えっと…………。」


何かもじもじしている。


「あの……出たいので出てもらっていいですか?」


「あ、ごめん!」


慌てて脱衣所から出る。

たしかに、いくら幼女でも男に裸は見られたくないだろう。気が利かなかった自分を叱る。


しばらくしてティアがタオルを巻いて出てくる。


「ありがとうございました。」


「うん、別に大丈夫。」


ティアはカイトの隣に座り、テレビをつける。あまり面白いものがないみたいで何度もチャンネルを変える。


『あっ、あなた♡そんなところ、んんっ!』


「こんなものは見てはいけない!」


カイトは慌ててテレビを消す。


「なぜですか?」


どうやらティアは男女の関係というものをまだ知らないようであどけない表情で首をかしげている。


「そ、それはだな……えっと……。」


「別にパパさんとママさんが愛の感情表現をしているだけではないのですか?」


「いや、だから、それは大人になってからじゃないとしては行けないわけで……まだティアには早いかな?」


曖昧だがなんとかごまかせた!


「なぜ私には早いのですか?私では力不足なのですか?」


悲しそうな声でティアは俯く。


「いや、そういう訳では…………」


「じゃあ私に愛情表現を教えてください!」


「…………へ?」


「私とさっきの人達みたいなこと、してください!」


無知というのは恐ろしい。恐ろしいほど真っ直ぐな目で見つめてくる。


「あ、いや、それは無理だ。」


「やっぱり私では……」


「そうじゃない!はっきり言うべきか……」


「?」


「あれはな……初めてする時はすごく痛い!」


「なぜ痛いのですか?」


「そ、それは…………。」


「なぜですか?」


好奇心が勝っているのかティアはグイグイ詰め寄ってくる。


「と、とにかく痛いんだ!それにあれは好きな人とするべきなんだよ。」


「私はカイトさん、好きですよ?」


「それは恋愛感情じゃなくて

仲間としての――――――!?」


気がつくとティアの顔が目の前にあった。

唇に何かが触れたのを感じた。


(幼女とキス……しちまった……!?)


加減がわからなかったようで唇を離した後、しばらくティアの息が荒かった。


「はぁ……ほら、痛くないですよ?」


「……へ?」


「愛情表現しても全然痛くないですよ?」


カイトはもう一度、テレビをつけた。

どうやらこの番組はキスしている顔だけしか映さず、18禁のシーンは映っていないようだ。ティアはキスシーンを見て、愛情表現と言ったのだろう。


色々と恥ずかしいことを言ってしまったことに気づき、顔が熱くなる。


「どうしたのですか?」


「いや、何でもない。」


「……もう一度、キス、しますか?」


今度は照れてしまったのか、俯きながら言う。


「いや、もういい……。」


「え、なぜですか?」


「俺の体が持たない…………」


視界が上から下に流れ、やがて真っ暗になった。


「だ、大丈夫ですか!?」


最後にその声が聞こえた。

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どうやら妹とゲームに閉じ込められたようだ プル・メープル @PURUMEPURU

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