どうやら妹とゲームに閉じ込められたようだ
プル・メープル
プロローグ
過去の話をしよう。
これは多分、1ヶ月くらい前の話。
コトは妹の部屋で起こる。
「なんだ?そんなに慌てて……」
「ついに完成したんだよ!」
「完成したって……なにが?」
「何がじゃないよ!前から言ってたやつでしょ!」
俺の名前は
一応のこの話の主人公だ。
そしてメインヒロインは妹。
名前は
「あー、あの胡散臭いやつか!」
「胡散臭くなんてないもん!レッキとした文明だよ!科学界の美術作品だよ!」
「そんな大きな声出したら近所迷惑だろ。」
月彩は小声にして話を続けた。
「ついに完成したんだよ!私の力作!
『ストーリーにところどころ私情や不具合があるけれどクレームは受け付けておりません。もしクレームが来たらそいつのアカウントを管理者権限でBANしますRPG』が!」
「相変わらずネーミングセンスは皆無だ。」
「仕方ないよ!お兄ちゃんだって賞味期限、食べてから確認してるでしょ?みんなだって同意書とか読まない感じなの。それは必要ないと思っているからだよ!だから、必要事項を絶対的な立場のタイトルという場所に置いたのです!」
「長ったらしい説明をどうも。」
妹は天才だ。今だって、意識をゲームに直接入れられるゲームを作ったところだ。
「じゃあ全世界に配信するね!何人が買ってくれるかな?」
月彩はウキウキ気分でゲームを配信した。
「ほら!もう2万人も買ってくれてるよ!」
「おお!我が妹ながら……すごいぞ。」
「じゃあ頭撫でて!」
「仕方ないな……今だけだぞ?」
擦り寄ってくる月彩の頭を海斗は優しく撫でてやる。
「むふふ、ありがとう♪」
やっぱりうちの妹は可愛い。
自信を持ってそう言える。
「ところで……このゲームはどんなゲームだ?」
「えっと……魔法あり、剣あり、銃あり、ほぼなんでもありのMMORPGです。」
「……月彩、お前、MMORPGの意味、しってるのか?」
「え、えっと……たしか……
Mマジかよww!
Mマジで凄い!
Oオーマイガー!
R理解出来ねぇ凄さ!
Pパネェ!
Gゲーム。
じゃないんですか?」
「最後しかあってねぇよ!なんだよその感嘆文は……。」
くゲームの知識もまともに持っていないというのにゲームのクオリティは素晴らしいのだ。
ゲーム会社からオファーが来るほどだからな。
「じゃあ私たちも遊んでみましょう!」
「お、いいな!」
「あ、その前に私のアバターに管理者権限をつけて……」
「チートじゃねぇか!」
「だってこのゲームは結構やばいですからね。モンスターが強めです。」
「楽しみだな。」
「ですが、死んだらパーティに助けてもらわないと持ち物全てをドロップして始まりの街の教会に連れていかれます。」
「面倒だな。」
「だから管理者権限で私を強くしたのでお兄ちゃんは安心して戦ってください。蘇生魔法を連続で打ちます!」
「ま、まぁ……助かるな。」
「では!レッツ、プレイングゲーム!」
「相変わらずネーミングセンスは皆無だな。」
月彩はパソコンのスタートボタンを押した。
「ん?なんかおかしくないか?」
「そうですか?」
画面が歪んでいるように見える。
だが、ゲームの仕様によって2人はゲームの中に吸い込まれていく。
「これがダイブの感覚か。」
「変な感じですね……。」
ついた場所は草原……。
「あれ?おかしいですね。
仕様では王宮についてからアバターメイキングが行われるはずなんですけど……。」
「そうなのか?」
「もしかしてミスっちゃいましたかね?」
「じゃあ王宮まで行くか。」
「待ってください。管理者権限でワープします!」
「使えるところで使うんだな。」
「あ、でも今はまだ王宮しか登録されていませんからね?言ったことのある場所に瞬間移動する力ですから。」
「あー、ゲームでたまにマップ画面から飛ぶヤツか。あれって妹の力だったんだな……。」
「妹、すごいでしょう?」
胸を張ってドヤ顔する妹と共に、体がワープを開始した。
「これが王宮か?」
「はい、作った通りです!」
王宮の廊下をまっすぐ行けば王の部屋だ。
「入りましょう!」
大きな扉はそれほど重さを感じずに開いた。
「王様!」
「ん?なんじゃ?」
「いや、なんじゃ?と言われても……」
「王様?キャラクターメイキングは?」
「は?」
王様は驚いたような顔をしている。
「お主らはキャラクターメイキングを終了しているぞ?」
「は?どういうこと?てか、この王様、NPCなのによく喋るな。」
「はい、AIが搭載されていますから。」
「お主らには用はないぞ?早く旅に出るのじゃ!」
そう言うと魔法かなにかで王宮の外に飛ばされてしまった。
「なんだと……」
「まぁまぁ、お兄ちゃん。キャラクターメイキングは管理者権限で出来るからさ。」
「そうなのか?」
「まぁ、初期装備とかは貰えないけど……」
「それが重要なんだよ!!」
海斗はガックリと肩を落としてしまう。
「ドンマイです。」
「まて……ログインし直したら王宮に行けるんじゃないか?」
「あ、そうかもしれません!」
「やってみよう。」
海斗はメニューを開く。
「えっと……ログアウトは……?」
「あれ?ないですね……」
月彩にも無いようだ。
「え?どうするんだ?」
月彩は考える仕草をして真っ直ぐに海斗を見る。
「……ごめんにゃさい」
可愛く猫耳を出現させて、てへっと……。
「許すまじ……」
「へ?お、お兄ちゃん?そ、そんなに怒らないで!」
「帰れなかったらどうしてくれるんだよ!」
「私も同じ立場なんですよぉ!」
「お前はいつも何か欠けてるだよ!」
「仕方ないじゃないですか……私、ゲームが好きなんじゃなくて……ゲームをしているお兄ちゃんが好きなんだから!」
「…………」
涙ぐんだ月彩の目を見て、それ以上は責められなかった。
「ごめんな、言いすぎた。
俺も、月彩とゲームができて嬉しいぞ。」
月彩の柔らかい髪の毛を優しく撫でながら笑いかける。
「本当ですか?」
「ああ、本当だ。出る方法、一緒に探そうな?」
月彩が頷いたの見てから海斗は王宮下の街を見渡す。
それにしてもよく出来ている。
街ゆく人の中にはプレイヤーもいる。
あの人たちも閉じ込められているのか……。
「ほら、まずは街を探検しようか。」
「はい!」
子供のようなキラキラした目で……、
いや、中学生だからまだ子供だな。
好奇心溢れる瞳で街を見渡して、2人の冒険が始まった。
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