第4話 「 苦 悩 」


 僕は自転車で走っていた。


 地球のまわりを一周、二周、三周──。

 ピラミッドを見て、凱旋門を見て、自由の女神を見た。

 オーロラを見て、ペンギンを見て、ピレネーを見て、モアイ像を見た。


 風が、ごうごう耳元でうなる。


 自転車はますます加速する。

 車輪はうなり、タイヤのゴムは焼き切れて、光の速さで四周、五周、六周──


 小石につまずき、ピン──と弾き飛ばされた。


 入道雲を抜け、成層圏を抜け、大宇宙に放り出される。

 無音の真っ暗な宇宙では、僕の自転車がふわふわ漂い、星がキラキラ瞬いている。


 僕もぽっかり漂いながら、広大な宇宙をながめ渡す。

 一つ、キラリと星が流れた。


 答えは、どこにあるのだろう。




           ~ 苦 悩 ~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る