第3話 「 決 断 」


 天空に張り渡された一本のロープ。


 両手を広げ、バランスをとりつつ、渡っていく。


 天気は良好、風もない。

 歩いていれば落ちないが、その足を止めたが最後、バランスを失い、落下する。


 足元のロープはまだまだ長く、無限に続いているけれど、やはり、いつかは足が止まって落下する羽目になるだろう。

 だから、不如意な事態に陥る前に、覚悟を決めて、自ら下界に飛ばねばならない。



 右手の眼下は「緑の世界」


 ジャングルのごとき森林が、視界を地平まで埋めている。

 ひっそり涼しく、のどやかだ。

 天敵の襲来がないではないが、自由に気ままに暮らしていける。



 左手の眼下は「赤の世界」


 赤く焼けただれたビル群が、視界を地平まで埋めている。

 空はどんより掻きくもり、ガヤガヤうるさく騒がしい。

 規律や責任を負うことになるが、天敵に食われる心配はない。



 風が、少し出てきたようだ。


 下界から蒸気が立ちのぼり、地の底が歌っている。

 行きすぎる鳥が " 時 " を告げた。


 さてと、どちらに落ちようか。





          ~ 決 断 ~





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