2-1. ここは?

 身体の芯がもやっとした感覚。

 意識も、なーんか、ぼやっとしている。


 周りに映る景色が、現実ではないような。そんな感覚。


 なんというか、背中に当たる感触が、堅い。

 やわらかシーツの上で寝ていたはずなんだけど、だいぶゴツゴツしている。


 起き上がると、なぜか、体が軽く感じる。

 すごい勢いで立ち上がることが出来た。


 頭の芯あたりが、まだ、ぽやっとしているのに。


 部屋も、俺の部屋と違う。

 なんか、少女が馬乗りになっていた、一面真っ白な部屋とも違う。


(4畳半?)


 そう、今俺が居る部屋は、4畳半だ。

 和テイストな部屋の中には、ちゃぶ台と、タンス。


「ええと……」

 外に出る。

 とにかく、不思議と体が軽い。


 いつもなら、100ぐらいの意思を込めて「うごけぇぇ!」と意識しないと、前に出ない足。


 それが、1ぐらいの力でスッと足が出る。足に羽が生えているように、体の摩擦がなくなったように。


 ラクだ。


 とにかくラクに、体が動く。


 どうなっているんだ?


 ここはどこだ?


 ◆


 四畳半を出ると、外は、知らない町並み。


 ここはどこだ?


 でも、建物とか、道とかは、いたって普通。


 道路を車が走っているし。


 道を歩いてる人の服装も、ふつーの私服とかだし。


 スマホを片手に、しゃべりながら歩いてる人とかもいるし。


 ただ、なんだろう……?


 少しだけ違和感が。


 見かける人の表情が、なんというか。


 のんびりしているというか。


 覇気が無いというか。


 大学に行く時の電車とかで見かける、眉間に皺を寄せて切羽詰まってるサラリーマンとかを、全く見かけない。


 普通の町並みなのに、熱量が少ないというか。


 地球から、松岡修造を引き算したかのような。


 総じてみんな、おだやかな顔をしていた。


(ここは……どこなのだろう?)


 俺は、ポッケからスマホを取り出す。


 ……圏外だった。


 キャリアの電波が無い程、田舎な町並みってわけでもないのに。


 民家とか、ビルとかの表札を見てみる。


「田村町4ー2」

 とか、いたって普通の地名、番地が書いてある。


 この状況を、俺はどう考えればいいのだろう?


 これが、「中世ヨーロッパの街並みで、鎧を来た冒険者が、馬車に乗って移動している」みたいなのを目撃していたなら、問等無用で、異世界転移なんだろうけれど。


 コンビニに入った。

 やたら駐車場スペースの大きい駐車場だ。

 

 雑誌が並んでいる、その入り口近くに、地図が売られていた。

 冊子タイプの地図をみると……。


『宮手県ロードマップ』

 と、書いてある。


 宮城県と岩手県とが合体したような名前、見たこともない地形。

 遠北川とかいう、謎の川が、地図には書かれていた。


 とどめは、これだ。


『読みやすい、目本ロードマップ』という、折りたたみポケットサイズの地図冊子。


 お値段、752


(あー、これは……)


 夢か……。


 もしくは。


 異世界転移だな。

 日本によく似た、別の世界への――。

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