1-1. まどろみ

 もう少し、寝ていたい。


 まどろみの中で、目覚まし時計をチェックすると、もうお昼前だ。

 3限からの授業がある。


 だけど、寝ていたい。

 

 春の陽気がそうさせるのか、とにかく眠い。

「春眠暁を覚えず」とは、よく言ったものだと思う。


 今日の講義は「英語」なんだけど、出席が足りないと、即単位を落としそうになる、「ハマリ」教科。


 あー、億劫だ……。


 行かなきゃならないと分かっていると、余計にベッドから起きたくなくなる。


 寝るのは、身体に良いはずなんだけど、なんで寝たい時にぐっすり眠ることが出来ないんだろう。この社会は。


 寝っ転がったまま、近場に置いてあったスマホに手を伸ばし、チェックする。


 特にメールが来ているわけでも、LINEが来ているわけでもなかった。


 時間が無いとわかっていると、どうして関係ない事に手を出そうとしてしまうのだろう。


 俺は、スマホの画面に並んだアプリを適当に起動する。


 あからさまに「課金」で稼ごうとしている、パズルとバトルの組み合わさったアプリを、なんとか課金無しの初期装備で進める。


 無為の時間を、スマホアプリで浪費。


 その間に、俺の意識は、ぽやーっとしてくる。


 身体の芯に、もやがかかったような感覚。


 ぬくいベッド。


 そして俺は。


 ――またも、眠りの世界へと旅立ってしまっていた

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