1-2. 夢の中?

「起きてください?」


 声がする。


「いつまで寝ているんですか?」


 体を揺さぶられる。


「なんだよ、気持ちよく寝てるのに……むにゃむにゃ」


 今俺は、この「睡魔」という快楽に身を委ねているわけで……。


「いいかげん起きなさい!」


 お腹の辺りに重みを感じる。


 しょうがないので、目を開けると。


 俺のお腹の上に、美少女が乗っていた。


 俗に言う「ひらひらした服」を着た、アッシュ色の、肩ぐらいまでの髪の少女だ。


 ひらひらした服の上からでも、彼女のきゃしゃな体型はわかる。なぜなら薄くてひらひらした服だから。


「あのー、あなた誰ですか?」

 状況に着いていけない俺の発した言葉は、それだった。


 なんで美少女が、俺の上に乗ってる? いや、心地よい肌触りと、髪の良い香りなのはわかるけど。


 甘い香りの中に、あからさまに違う香りが別の所から香った。


 ベッドの上に横になったまま、右に首を回すと。白いクロスの引かれたテーブルに、豪奢な食べ物が。


 晩餐会? みたいな、異常なほどの。


「なによ? あたしより、食べ物の方が良いっての?」


 上から降ってきた、美少女の声。


 顔を上に向けると、ひらひらした服の胸元から、やわらかそうな谷間。呼吸にあわせて上下に小さく揺れている。


「……」


 しばしそこで視線がとまった。


「ご主人様……」


 左の方で、そう声がしたので今度は左を向くと、みすぼらしい、灰色の服を着た女の子が一人、涙目でこっちを見ていた。


 手枷をされているところをみると、奴隷か何かのような。


「だーかーらー。あたしじゃなくて、奴隷を取るつもり? あんたは」


 またも上から、俺にまたがった少女の声が降ってくる。


 右、左と来て、頭の上方向と、足元方向だ。


 頭の上方向には金塊が。

 足元方向には、くるみみたいな実が山盛りに。


 斜め方向には、温泉やら、旅行のパンフやら、なんやらかんやら。


 とにかく周りを、種々雑多な物が包んでいた。


(わけわかんねえなあ……これ、夢かなあ)


「どうするの? 矢多良は、どれを選ぶの?」


 俺にまたがった女の子が言う。


 うーん……。



「とにかく、もう少し寝るわ。眠気には勝てないんだ」


 とだけ告げて、俺の意識は再び途絶えた――。



 



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