キミはともだち

カント

本編

 知人に頼まれて引き取ったその日本人形は、実に珍しい逸品だった。


 髪が伸びる。


 夜、低い声を出す。


 僕を見つめてくれる。


 初めて友達が出来た気がして、僕は彼女を連れ、頻繁に旅行した。


 一人じゃない――なんて素敵なんだろう。




 ある日。目が覚めると、僕が僕を覗き込んでいた。


「体を貰うね。友達でしょ?」


 僕は日本人形と化している。成る程、彼女は人間になりたかったのか。


 君の望みなら――応える前に、彼女は笑って部屋を出て行った。




 夜。僕がのんびり人形していると、疲れた顔の彼女が帰ってきた。


「貴方、毎日こんなことしてるの?」


 翌朝、僕は元の体に戻っていた。僕の職場はお気に召さなかったようだ。


 「お疲れ様」と、僕は彼女を撫でた。

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キミはともだち カント @drawingwriting

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