第3話 眠れる姫
「プリンセス、ね。なるほど、女の子をその気にさせるという意味では洒落た名前ですね」
その空間は薄暗いが、人の輪郭ははっきりと捉えられる場所だった。
「と、なると彼女はさしずめ眠り姫という事ですか?」
若い男だった。白衣を着た研究者肌の男はガラスの棺の中で眠る少女を見て肩をすくめた。
「そして、お姫様は王子様のキスで生き返る……問題なのはその王子様がどこにいるかですが……もう目星の一つや二つは着いているのでしょう?」
白衣の男の言葉に、部屋の奥でソファーに腰掛けた老婆は無言で頷いた。
「わかりました。それじゃ、私もそろそろ本腰を入れるとしますよ。彼女の為にもね」
形ばかりの礼をして、白衣の男が去る。
老婆は無言のままを男を見送った。そして、そっと立ち上がりガラスの棺へと枯れ木のような腕を伸ばし、表面を撫でる。
言葉はなかった。ただ慈しむように、いとおしむように、老婆は棺を撫でる。
そして、二人の背後に鎮座する漆黒の巨人はその命の灯らぬ黒い瞳を閉じていた。いつか、眠り姫が目覚める時、そして王子様の訪れを待った。
「王子様は、どこ?」
その時、棺の中の少女が呟く。
少女機甲戦記プリンセス・ブライド 甘味亭太丸 @kanhutomaru
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