ロリコン矯正施設のまちがった使い方

ちびまるフォイ

えっちな展開とかねぇよバーーカッ!!

「お話を伺わせてもらえますか?」


「うちの子、昔は優しくていい子だったんです。

 それがどうしてロリコンになったのか……。

 近所でもロリコンだと噂になっていて、もう辛いんです」


「息子さんは何か犯罪めいたことをしてしまったんですか?」


「いいえめっそうもない!

 人様に迷惑をかけるような人には育ててません!」


「ではなぜロリコンだとバレたんですか?」


「息子は"オープンロリコン"を自称しておりまして……。

 ほら、ゲイとかレズとかを公言する人も多いじゃないですか。

 それの延長としてロリコンも明かしちゃってるんです」


「急に犯罪臭がしますね……息子さんは今どちらに?」


「日課の小学校周辺をパトロールしております」

「すぐに連れ戻してください。今すぐに」


施設のスタッフにより息子はライオン用の檻の中に入れられ

「ヒト科 ケダモノ属」の立て札で誰も近づけないようにした。


「お母さん、ご安心ください。

 我がロリコン矯正施設"撲滅ロリータ"で息子さんを必ず正常にしてみせます」


「よろしくお願いします」


息子は施設へとゆうパックで届けられた。

施設はミサイルが飛んできても壊されない頑丈な壁に囲まれ、

周囲すべてが見渡す限りの老人ホーム。


ロリコンの「ロ」の字も近づけない施設になっていた。


「では、さっそく治療を始めます」


最初の治療からいきなり飛ばしても効果は薄い。

息子にはいきなり小さな女の子の写真集が手渡された。


「ロリコン! ロリコン!!!!」


収容所でお目にかかれるとは思ってなかった息子は喜び、

四つん這いになって写真集をむしゃむしゃと口に入れてしまった。


それを見ていた新人スタッフは青ざめた。


「大丈夫なんですか? ロリコン矯正させるのに、むしろ再発させちゃって」

「まあ見てなさい」


翌日も写真集が渡された、その次も、その次の日も渡された。

同じ子が映っている写真集ではあれど、少女はだんだんと大人へと成長していった。


「なるほど、だんだん大人の女性を好きになるように仕向けるんですね!!」


新人は納得したように手をぽんとたたいた。

でも、施設長は表情を曇らせていた。


「これはダメだな……効果がなさそうだ」


「え!?」


「見てみろ。自分の恋愛対象外になったとたん、見向きもしなくなった」


「最初はあんなに喜んでたんですけどね……」


「次の方法を通ろう。ショック療法だ」


息子は次なる矯正施設の部屋へと連れていかれた。

そこには女性がたくさんいるまるで女子刑務所のような場所。


「ここはなんですか?」


「ハーレム体験場だ。男である以上、女性から褒められて怒る人はいない。

 年齢に相応しい異性から褒められて喜ばせるんだ」


「なるほど!! それなら価値観も変わりそうですね!」


女の園に息子を放り込む。

スタッフの女性たちは息子を褒めて、ほめて、ほめまくった。


「その手入れしていない眉毛、ワイルドで素敵!」

「ビン底みたいなメガネで表情が読み取れないなんてクール!」

「中年太りのお腹も抱きしめたくなるほどカワイイわ!」


スタッフは息を飲んで様子を見守った。

息子はまんざらでもない様子。


「効果出てますよ! 顔のニヤニヤが止まりません!」

「ようし、畳みかけるぞ!!」


息子を次の部屋に移す。

部屋にはスクリーンと椅子が1脚だけ用意してある。


息子は椅子に固定されて首輪を取り付けられた。


「なんだここは!? さっきの部屋に戻せ!」


「大丈夫です。これからあなたの大嫌いなものが見れますよ」


「なんだと!?」


息子はぎゃんぎゃん騒いでいたが、スクリーンに少女の画像が出るなり歓声に変わった。

だが、その瞬間に取り付けられている首輪から電気ショック。


体全体がビリッという不快感に包まれた。

その後も、スクリーンには少女の画像が出るたびに電気ショック。


通称『パブロフの部屋』と呼ばれる更生部屋での体験が終わるころには

息子はすっかりと価値観が変わっていた。


「ヨウジョコワイ……ヨウジョ……デンキ……コワイ……」


再び女の園に戻されて、近い年齢の女性から慰められて喜んでいた。


「やりましたね! 治療成功じゃないですか!?」


「ああ、順調に快方へと向かっているな。この調子でいこう」


スタッフはハイタッチを交わした。

翌日、息子の治療具合を見せるために家族との面会が行われた。


息子を面会部屋へと連れて行くと、ガラスの向こうには母親と――。


「なっ!?」


母親は小さな女の子を連れていた。

息子は失っていたロリコンの目が光った。


「グアアアアアア!!!! ロリコン!! ロリコンンン!!!!」


「おい! 麻酔弾を撃て!」

「抑え込め!! 危険だ!!」

「もどせもどせーー!!」


男性スタッフ30人がかりで息子を面会部屋から連れ出した。

母親には厳重注意が言い渡された。


「やっと治療の終わりが見えてきたのに、

 なんでこのタイミングで小さな女の子を連れてくるんですか!!」


「これはうちの姪なんです。

 息子がずっとロリコンを摂取できてないかなと思って……」


「おかげで治療は台無しですよ!!」


「それじゃ息子はもう治らないんですか?」


「……いえ、最後の手段があります」


矯正施設では収容から出るまでの時間を計算して、

確実に治療ができるようスケジュールが組まれている。


再びふりだしに戻ってしまった以上、残りわずかな期間で治療する方法は1つしかない。


スタッフは息子を特殊な機械の中に寝かせた。


「ロリコン!! ロリコンよこせぇぇ!!!」


「あの、こんな状態で本当に直せるんですか? 記憶改ざんするとか?」

「いいや、脳をいじったとしても性癖までは変えられない」


「じゃあこの機械は何を……」

「彼を正常とさせるんだ」


機械のスイッチが入れられた。


 ・

 ・

 ・


数日後、母親は矯正施設へとやってきた。


「ああ、本当にありがとうございます。

 あれから息子がロリコンなどと後ろ指さされることもなくなりました」


「それはよかったです。その後、元気そうですか?」


「ええ、それはもう。毎日、明日が来るのを楽しみにしてます。

 それで、ちょっとお願いがあるんですが……」


「なんでしょう?」


母親は施設スタッフの耳に近づき、小声で尋ねた。




「息子に使った体を少年に戻らせる機械ですけど

 あれって私にも使って若返ったりできるんですか?」

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