第49話 それ、地雷ですよ?

7月21日。

日は過ぎて行き、夏休みに突入した。

店の復興後、相変わらず俺とサクは手伝いをしている。

日中は本当に暑く餡子の為の豆を拵えるのに汗が吹き出る。

だが、それでも楽しくやっていた。

俺はサクに餅を渡したりする。

その時だ。

親父が唐突に、一言だけ言葉を発した。


「.....桜。そしてカイ。後で話が有る。良いか」


「.....は?」


唐突の呟きに俺達は固まってしまった。

だが、その時は忙しくて直ぐに動かなければいけなかったので。

深く考えている暇が無かった。



「.....親父」


「お義父さん.....?」


俺達は制服を脱いで、普段着で。

作業場に居た。

親父は相変わらず、仕込みをしている。

だが、俺達の言葉に手を止めてそして俺達の方を見てきた。


「桜。カイ。お前達は.....付き合っているのか?」


「え、あ、いや.....違うよ。お義父さん」


「.....そうだな。サク」


俺達の否定に。

そうなのか、と親父は小さく呟く。

だが、その顔は真剣な感じを醸し出していた。

静かに、俺達の方を見てくる。


「.....もし、お前達が付き合うのならそれは俺は止めない。だが、カイ。責任は持て。必ず、桜を一人前の女として見るんだ。妹としてでは無く、だ。カイが桜の名前を言うのが変わったからもしかしてと思ったが。違うなら.....良いんだが。すまない」


「親父.....分かった。サクと付き合う事になったら.....絶対に守ると誓うよ」


「.....か、カイ.....」


ボッと赤面しながらサクはモジモジしていた。

俺はその光景を笑みを浮かべて見つつ。

サクの頭に手を乗せた。

そして、親父の方を見る。


「.....親父。もし付き合うとなったら.....応援してくれるか」


「.....」


親父は立ち上がってそして。

俺に向いて、静かに見据えてくる。

のだが、次の瞬間。

信じられない光景を見た。

笑んだ。

親父が、である。


「応援する。それは.....嬉しい事だから、だ」


「.....親父.....」


「お義父さん.....!」


まさかの事に俺は涙が浮かんできた。

そして目に手を当てる。

親父が笑ったのが何よりも嬉しかったから。

サクも泣いて俺を支えてくれた。

何よりも嬉しい。

ここ最近では、だ。


「約束してくれるか。カイ」


「.....はい。約束します」


「.....はい」


親父から笑みは消えた。

だが、そうか。

と安心した様に。

作業に戻っていった。

俺はその光景を生涯、忘れないだろう。

きっと、だ。



「.....夏休みだから.....デートするか。サク」


またお金をくれたのでデートでもするか。

その様に思った。

サクは髪をかき上げて。

そして恥ずかしそうに、い、良いの?と言った。

恥ずかしそうだ。


「.....暇だしな」


「でも、勉強.....」


「.....それよりも今は暇潰しがしたい。良いか?」


「じゃあ、付き合って!」


本当に嬉しそうにする、サク。

俺はその様子を頬杖を付きながら、見る。

そして、サクは立ち上がって、嬉しそうに自室へ向かった。


「待っててね。とっても可愛いの着るから!」


「程々にな。まぁ、元からお前は可愛いけど」


「も、もう!」


赤面で駆け出して行く、サク。

ったく、浮かれ過ぎんなよ、俺はその様に思い。

準備をするのに、立ち上がった。

そして俺は歩き出す。



「.....ジーパンにTシャツ、ベレー帽か」


「に、似合うかな」


「.....凄い可愛いよ。似合ってる」


「えへへ、やった」


玄関で俺達はその様に話す。

こんなに可愛い女の子が俺の事を好きってのがな。

やっぱり有り得ないよな。

俺はその様に思いながら、サクを見つめる。

サクは目を輝かせて話した。


「.....ど、何処に行く?何処でも良いよ」


「.....今日は街に出てみるか?」


「.....え、良いの?」


「ああ。街に出よう」


そして、俺はサクの手を引いた。

俺達は玄関ドアを開けて。

そして外に出る。


「.....カイ。恋人繋ぎして良い?」


「.....え、な、何だよいきなり.....」


「えへへ、良いかな?」


静かに、恋人繋ぎをするサク。

そして寄って来た。

俺を見上げて、本当に嬉しそうにする。

まるで、プリ○ュアでも見た様な少女の。

嬉しさの様な感じだ。


「じゃあ、行くか」


「うん」


駅に向かって歩き出した。

恋人繋ぎをしながら、である。

俺もサクも嬉しそうな感じであった。



切符は買った。

そしてお茶も買った。

もう忘れ物は無いかな?

よし、出るか。


「.....街中なんて久しぶりだね」


「2年振りか。どう変わってんだろうな。この辺にはスタバとかユニとか無いしな。街中なら有るだろうし」


「楽しみー」


「そうだな」


電車が来た。

俺達は電車に乗り込んで。

そして前を見る。

初々しい、家族の様な3人が居た。

赤ん坊、男の人、女の人、つまり、結婚しているのだろう。

その家族は会話していた。

俺とサクはその家族を見つめる。

すると。


「.....私も妊娠したら.....あんな家族みたいに.....」


その家族に何か呟いてボッと赤面したサク。

俺は?を浮かべた。

何だろう?


「.....サク?」


「いや、何でもないから!」


「???」


ん?訳が分からん。

俺はその様に思った。

サクは赤面で俯いて、そしてモジモジする。

うーむ?


「.....まぁ、熱じゃないなら良いけどな」


「鈍チン」


「.....は!?」


何でもない!

その様に怒る、サク。

家族に笑われながら、横を向いてしまった。

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