第48話 普通養子縁組

「.....私のお父さん.....あ、お義父さんは.....私が捨てられた時に拾ってくれたんです」


スポドレを揺らしながら。

ゆっくりと、過去の話をする、ひなた。

俺は真っ直ぐに見据えて。

ひなた、の言葉を一言一句聞き逃さない様に気を付けた。

周りのサク、栞、星、ゆう、も聞き耳を立てる。


「.....お義父さんは当時は巡査だった。警察官.....それもあって.....拾ってくれてから.....私を自分の子供の様に可愛がってくれたんです。でも実際の所、私を育てるのはそう簡単じゃ無いって事を伝えたんですが.....」


だけど。

それでも吾郎さんは。

正義感を打つけたんだな。

確か、それらを養子縁組だったかな。

その様に言った気がする。

何で知ってるかって言えば俺達の状態にあるけど。


「.....それでも育てると言ってくれたんだな。良い.....お義父さんだな」


「.....そうです。カイちゃんの言う通り。本当に良いお義父さんです。でも、私は親との縁が切れていません。それは.....お義父さんが一人だったからというのも有るんですけど.....普通養子縁組だから.....」


✳︎普通養子縁組。

特別養子縁組と違い、親と縁が切れない養子縁組。

但し普通養子縁組は特別養子縁組と違い、婚約した単独の未成年でも至って普通に養子縁組になれたりする。

また、戸籍の続柄も特別養子縁組は長男と実子の様に記されるが、普通養子縁組は養子、と分かれる。

サービスの面でもかなりの違いがある。


「.....今の段階では普通養子縁組が限界か.....」


「.....そうですね」


何というか。

あの親と縁が切れないのは複雑だな。

結構、大変な感じだろう。

これは栞もそうだと思うしな。

俺は栞を見る。


「大変ですね.....」


「まぁ、確かに大変ですね。でも.....そのうち報われると思っています」


「.....だが、キツイ時は話してくれ。何時でも力になるからな」


良くは分からない制度だ。

下手に手を出すのもどうかと思う。

なので、俺は一言、その様に話した。

これに対して、ひなた、は笑みを浮かべて言う。


「.....うん。有難う。カイちゃん」


「.....」


しかし何だろうな。

俺達、似ている気がする。

比較したらいけないのかもしれないが。

似ている気がするんだ。

思っていると、サクも同じ考えの様で。

俺を見ていた。

すると、星が突然、立ち上がって。

手をパンと叩いた。


「.....難しい話は置いておいて!またはしゃぎましょう!」


「.....それもそうだ」


「うん」


で、立ち上がった時に。

足が滑った。

しまっ。


ボヨン


「.....」


「.....あー!その役目、星がしたかった!」


気が付くと。

サクの水着を奪い取り。

更に手にな、なんか柔らかい感触が。

ウェ!?

サクは涙目で赤面で震えていた。


「.....カイ?」


「.....落ち着け。ゆう。バキバキ手を鳴らさないで」


「この変態!!!!!」


思いっきり殴られた。

なんか手にまだ感触がぁ!!!!!



あっという間に日は過ぎていき。

夕方になってしまった。

俺達はゆっくりと家に帰っている。

オレンジ色の夕日が差し込む中、俺は海沿いの外を見ていた。

ぐっすり眠っている、5人。


「スウスウ」


「クー」


「むにゃむにゃ」


ははは、うーむ、平和だな。

俺はその様に思いながら、苦笑した。

ゴトンゴトンという、心地の良い音が鳴り響く。


「.....次の駅だってのにな」


「.....むにゃ.....」


ガシッ


「は!?」


サクが。

寝ぼけているのかコイツ!?

俺にそのピンク色の柔らかそうな唇を迫らせてきていた。

引き剥がそうとしたのだが、なかなか!

全力で掴んできてやがる!


「むにゃ、マシュマロ.....」


「何を!マシュマロじゃねぇ!!!!!」


あかん、これはあかん。

マジでヤバイ!

このままだとキス.....。

俺はボッと赤面した。

あの時を思い出してしまって。


「.....サク!起きろぉ!!!!!」


「むにゃ.....」


何とかサクを引き剥がして。

そして盛大にため息を吐いた。


「全く.....って、あ」


平和な時が過ぎていき。

駅が近づいてきた。

俺はみんなに声を掛ける。


「みんな!着いたぞ.....」


「むにゃ.....え?あ、本当だ.....」


「クゥ.....」


いや、起きろよ!

俺はその様なツッコミを入れながら。

頭に手を添えて、そして笑んだ。

また明日が始まる。

そして、俺達も未来へ突き進んで行くんだな。


「.....」


「.....カイ?」


「.....いや、何でもない」


疲れているけど、コイツらを見たら。

吹っ飛んでいったわ。

本当に有難うな、みんな。

その様に思いながら。

外を見た。

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