車専用旅館におこしやす~
ちびまるフォイ
気が付けばディストピア
ブロロロロロ....。
車が旅館に着いて降りると、仲居の車が待っていた。
「これはこれは、お待ちして居りましたランボルギーニ様。
さぁ、どうぞ中へ。タイヤもお疲れでしょう」
仲居に通されて旅館の中へと進んでいく。
旅館は車が通れるように通路は広く取られ、
車高が高いトラックでもぶつからないように天井も広々としている。
「こちら、くる間でございます」
「おお、いい眺めですねぇ」
「そうでしょう。当車旅館のイチオシの形式なんですよ。
昔は高層ビルとかあったんですけど、
今はもうなくなったのですっかりきれいな景色が見れます」
「食事は何時からですか?」
「20時でございます」
ランボルはハザードランプを点滅させた。
あ・い・し・て・るのサイン。
車に積んでいた荷物や部品を部屋に置くと、
やっとくつろぎモードになった気がする。
「それじゃ、ひとっ風呂浴びてこようかな」
通路を走って大浴場へと向かった。
大浴場は車用に大きく作られていて、いくつも種類がある。
泡風呂に、電気風呂、車用サウナまで万全だ。
「これはいいな。リラックスできそうだ」
ランボルは窓を全開にして、扉を開けて風呂に飛び込んだ。
ザザァと車用のお湯が車内に流れ込んでいく。
「ぷっはぁ~~! これは気持ちいい! 体が洗われる!」
そのあとも、車用サウナに車用アカすりマッサージをして
また風呂に入ったりして身も心もすっきり爽快で部屋に戻った。
部屋にはすでに車用のお布団が敷かれている。
布団に乗り上げると、やわらかな感触に思わずうっとり。
「ああ、これは安眠できそうだ」
ランボルは部屋にかけてあった時計を見て食事の時間になっていると気付いた。
食堂へと向かうと夕食はバイキング形式で、
好きな無人スタンドで好きなだけガソリンを補給できる。
「軽油いれよーぜ軽油!」
「待って待って、これ全部混ぜてみようよ」
「うっわなんかどす黒い!!」
軽自動車たちはガソリンサーバーの前ではしゃいでいる。
ランボルは空いている場所からガソリンを取って、舌つづみを打つ。
「うん、ここのガソリンはすごくいい!
もうメーターいっぱいだ!」
食事を済ませたランボルは部屋に戻って布団へダイブ。
車用布団をボンネットまでかぶって一休み。
「あぁ、ここはなんていい場所なんだろうなぁ」
大浴場では車内をくまなく洗えたし、
食堂のガソリンはまじりっ気なしでよかった。
布団だって車をほごしつつも汚れを吸着してくれている。
あたたかな布団に包まれてランボルはエンジンを切った。
翌日、ランボルは気持ちの良い朝を迎えた。
「はぁーー。エンジンのかかり具合もよくなってる!
なんだか車の調子がすごくいいぞ」
ちょうどチェックアウトの時間も近かったので仲居がやってきた。
「この度はご利用ありがとうございます。
お気に召していただけましたか?」
「ええ、それはもう! 本当にくつろげました!」
「それはなによりです」
ランボルは旅館の外に出ると、車をのせる車;ランボルギーニ(大)へと向かった。
「それじゃ、ありがとうございました。
本当に心から休めました」
「お気をつけて」
車の中でタイヤを回し、車載車のエンジンをかける。
ナビが自分の車庫を目的地に設定し、いざ発進。
というところで、仲居がすっ飛んできた。
「お客様、お客様~~!!」
「どうしたんですか? そんなにエンジンをふかして」
「お客様、お忘れ物がございます。お部屋にこちらお忘れですよ」
大ランボルギーニの扉を開けて確認した。
「ああ、その部品はもういらないですよ。
なくてもナビだけで自動運転できますし、
それにそのパーツを中に入れていると
車内が汚れてしまうので捨ててきたんです」
「そうですか、ではこちらで捨てておきます」
仲居は旅館に戻ると、人間をゴミ箱に捨てておいた。
車専用旅館におこしやす~ ちびまるフォイ @firestorage
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