運営のミスでVRMMOで最強になる

因幡 天兔

プロローグ1 

かすかに聞こえる女性の笑い声。「クスクス クスクスッ」と手の届かない、けれど少年の近くから高らかな笑い声が聞こえてくる。

その声はまた一人、また一人と増えていく。

その声を聴く少年はその笑い声に、見えない相手に同じ問いを繰り返す。


「あなたは誰?どこにいるの?」


と。けれど答えは返っては来ない。ただ、ひたすらに笑い声だけが聞こえるだけ。


少年はそんな話を親や幼稚園のお友達に聞かせるが、誰も彼もが「そんなわけないじゃない」「きっと夢を見ていたのよ」と、本気にして聞いてくれるのは誰もいなかった。


そして、またその笑い声が聞こえてくる。月日が流れるにつれて、その声は笑い声からすすり泣く声に変わっていく。少年が「どうして泣いているの?」と問てもやはり答えは返ってこない。

そして、いつからか、すすり泣く声は、怒りに声を荒げる咆哮へと変わっていった。その声に対しても少年は問う。けれど、答えは返ってこない。

ならば一緒に笑ってしまおう、泣いてしまおう、怒ってしまおう—その少年の導き出した答えは、正しかった。


怒りの咆哮をあげるようになって数日が過ぎた。少年は声が聞こえる度に、笑い、泣き、怒りで返した。すると—


「なぜ君は笑っているの?泣いているの?怒っているの?」


初めて答えが返ってきた。しかしそれは少年が求めた答えではない。それは少年が幾数幾百とといていた、問答の一つででしかなかった。


「なぜ君は笑っているの?泣いているの?怒っているの?」


それからは少年が同じ問いを受けるようになった。幾日も幾日も同じ問いを投げかけられる。


しかし、その声もある日を境に途絶えることになった。なぜ途絶えたのかは—少年でも覚えていない。

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運営のミスでVRMMOで最強になる 因幡 天兔 @Rabbit_usagi

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