大事に思うこの気持ち。どう伝える?

あらすじにもあるように、このお話は同じ作者様のお話、「光風の伝言」の世界を引き継いだものとなっています。
そのため、「光風の伝言」を先に読んでおいた方が、懐かしい人物の登場や一部の台詞が心に響き、より楽しめるのではないかと思います。

ですが本作は単なる以前の続きだけで収まるものではありません。
本作の主人公創君は、大学生になるまで恋の一つもした事がありません。そんな彼ですが、偶然図書館で見かけた女の子の事が気になり、次第に頭から離れないようになっていきます。
見ただけで話したことも無い相手に想いをよせる。ここだけ切り取ると滑稽にも思えるかもしれませんが、彼女の存在がだんだんと大きくなっていく様子が丁重に描かれ、読み手としてもどんな子なのだろうと心を引かれずにはいられません。

そしてついに彼女と初めて言葉を交わすのですが、その方法と言うのがなんと筆談でした。直接話せばいいじゃないか、なんて言うのは野暮なもの。二人が交互に鉛筆を走らせ想いを綴るシーンは前半の山場であり、読んでいて非常に心に残った名シーンでした。

このまま順調に二人の仲は深まっていくのかと思いきや、事態はそう簡単には進んでくれません。ですが時に迷いながら、それでも一途に彼女の事を想う創君の一途さに心打たれます。

誰かを思うっていいな。読み終わった後、そんな気持ちになるお話でした。

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