あらすじにもあるように、このお話は同じ作者様のお話、「光風の伝言」の世界を引き継いだものとなっています。
そのため、「光風の伝言」を先に読んでおいた方が、懐かしい人物の登場や一部の台詞が心に響き、より楽しめるのではないかと思います。
ですが本作は単なる以前の続きだけで収まるものではありません。
本作の主人公創君は、大学生になるまで恋の一つもした事がありません。そんな彼ですが、偶然図書館で見かけた女の子の事が気になり、次第に頭から離れないようになっていきます。
見ただけで話したことも無い相手に想いをよせる。ここだけ切り取ると滑稽にも思えるかもしれませんが、彼女の存在がだんだんと大きくなっていく様子が丁重に描かれ、読み手としてもどんな子なのだろうと心を引かれずにはいられません。
そしてついに彼女と初めて言葉を交わすのですが、その方法と言うのがなんと筆談でした。直接話せばいいじゃないか、なんて言うのは野暮なもの。二人が交互に鉛筆を走らせ想いを綴るシーンは前半の山場であり、読んでいて非常に心に残った名シーンでした。
このまま順調に二人の仲は深まっていくのかと思いきや、事態はそう簡単には進んでくれません。ですが時に迷いながら、それでも一途に彼女の事を想う創君の一途さに心打たれます。
誰かを思うっていいな。読み終わった後、そんな気持ちになるお話でした。
大学生になるまで恋なんてした事が無かったけど、図書館で見かけた彼女のことが何故か気になってしまう。
その大学にはある噂があった。図書館にある大きな鏡の中には女の子の幽霊が住んでいて、利用する学生たちを見守っているという噂が。彼女はその、図書館の幽霊なのだろうか?
そんなミステリアスな出だしから始まる今作。まるで幽霊に憑かれたかのように彼女のことが忘れられず、図書館に通うようになった主人公の男の子。
どうにかして彼女と話がしたい。そう思った彼のとった行動は声をかけるのではなく、メモ帳に書いたメッセージを渡すこと。そしたら彼女も同じように紙に文字を書いて返事をくれて、そこから二人の交流が始まっていく。
すぐそばにいるのに筆談!一見すると手間のかかるやり取りですけど、それが凄く良い!一気にこの物語に引き込まれてしまいました。
彼女に惹かれていく主人公。そんな彼の前にはある大きな障害が立ちはだかるのですが、それでもめげること無く思い続ける姿が健気で……
一途に彼女の事を想い、受け止めてあげたい。そんな彼の切実な想いが心に響く、綺麗な物語でした。
『幽霊』を愛した青年のラブストーリー。しかし後半はガラリと転回する! 深いテーマ性を感じる作品です。
物語の中に散りばめられた色と音の描写。読み進めていくと、それが大きな意味をもっていることに気付くことになる。ターニングポイントは彼女の真相。それが判明したとき、物語はガラリと転回する。これ以上はネタバレになるッ! アブナイあぶない……
私が個人的に惚れてしまった優花先輩。彼女は積極的に主人公にアプローチするが、その仕草やセリフが可愛らしい。その彼女は最後に…… いけない! これもネタバレになる。
この物語のテーマの深さを、ぜひ読んで確かめてみてください。