最新の短編

転生したら進次郎だった件

 ――目覚めなさい、勇者よ――


「……う……。ここは……?」


 ――ここは天界――


「つまり……天界ということか……? だからこそ私は、天界にいる……?」


 ――いまからあなたは別の世界に転生します――

 ――異世界〝シンジロニア〟に――


「……ひとつ、聞いておきたいことがあります」


 ――なんなりと――


「だからこそ、聞いておこうと思います」


 ――どうぞ――


「なぜなら……」


 ――はい――


「聞いておきたいからです……!」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

転生したら進次郎だった件

最終話

『ラスト・エピソード』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 異世界に転生後……

 数多の冒険を経て冒険したシンジローは、遂に魔王城へと辿り着いていた。そこは、魔王城だった……!


「よくぞ来た、勇者シンジロー……」

「ああ。来ていないわけではないからな。だから――来た」


 果敢に言い放つシンジロー。強敵との連戦で体はボロボロだったが、心は健在なのだ。そんな勇者を見て不敵に笑い、魔王は自らの兜を外した。素顔をさらけ出す。

 シンジローは、目を見開いた。


「な……おまえ……いや、あなたは……!」

「また会ったな、勇者よ。否――――」


 魔王の正体。それは。


「――――、と呼ぶべきか」

「父……上……!?」


 聖剣を取り落とす。シンジローは、放心した。

 父であるジュンイチローは魔王だった。

 なぜ――――


「なぜ……あなたが魔王なのですか……!?」

「それは、私が魔王だからだ」

「……ッ! そうか……だからこそ父上は魔王……!」

「ようやく理解したようだな。私が魔王だということを」

「だとすれば……あなたは魔王なのか……!」

「ククク……」

「何が可笑しい!」

「可笑しいからさ……」

「つまり、可笑しい……!?」

「それは可笑しいことを意味する……」

「く……くそっ……!」


 うなだれるシンジロー。しかしおぼろげながらに浮かんできたんです。〝勇気〟という言葉が。


「私は……諦めない。だからこそ諦めることはない。……それが、私の! 諦めない理由だァ――――――――ッッ!!」


 聖剣を携え、勇者は魔王に立ち向かう!


「フン……諦めない、か。だが貴様は知るだろう。諦めないということは、諦めることを諦めるということでもあるのだとな……」

「くらえええ――――――――――――ッッ!!」


 奥義スラッシュカッターを放つシンジロー。魔王は回避すらしない。聖剣を指一本で受け止めた。


「効かんな……」

「効いていない!?」

「そうだ……私には効かぬ」

「まさか……効かないのか!?」

「言ったはずだ……効かん、とな」


 聖剣を指一本で受け止めた魔王は、そのまま受け止めている。シンジローは、受け止められていた。だが。


「いや――効かないのだとしても! 効いていない攻撃は効かない。効くわけがないんだッ!」

「クク……なるほどな。だが、その攻撃は効かない。効かない攻撃は効かないはずだが?」

「――――フッ。効かないのは、私の攻撃の方さ。だが魔王……いや父上! あなたは私の攻撃で傷ひとつつかない! だとするならば、方法はたったひとつだけある。決して通用しない方法が!」


 シンジローには確信があった。

 魔王には攻撃が効かない。だとすれば、攻撃は効かないはずだ。

 ならば――攻撃は、効かない。


「フン……その無駄な言葉、流石は痛くも痒くもない攻撃をしてきただけはある。――――さあ、来い! 何のダメージにもならない攻撃を私に見せてみろ!」


 効かない奥義を放つべく、シンジローは構えた。


「(一切通じない攻撃を、無意味な速度で叩き込む。チャンスは一瞬!)」

「何……!? その構えは、まさか……ッ! 私にかすり傷を追わせることもできない技ッ!?」


「天よ。空よ。私に力を!

 奥義――――

     ――――スラッシュカッタァァァァアアア!!」


「何、だと……! この程度の攻撃は効かない。そのはずなのに……全く効かない、だと!?」

「そうさ。この攻撃は効かない。だけど、忘れていやしないか?

 この攻撃は――――

    ――――効かないってことを。」

「馬鹿なアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 効くことのない奥義をぶつけられ、魔王はもはや無傷。

 そんな健在同然の魔王に歩み寄り、シンジローは、一筋の涙を流した。


「魔王……。あなたはまさしく、魔王でした……――――」






     𝐂𝐀𝐒𝐓

シンジロー  카기론 로기카

   魔王  우카기 로치



    𝐃𝐈𝐑𝐄𝐂𝐓𝐎𝐑

   종말의 여신 끝



    𝐏𝐑𝐎𝐃𝐔𝐂𝐄𝐑

     카기로



     𝐄𝐃𝐈𝐓𝐎𝐑

   덴자라스 킹 카길로



 𝐏𝐑𝐎𝐃𝐔𝐂𝐓𝐈𝐎𝐍 𝐃𝐄𝐒𝐈𝐆𝐍𝐄𝐑

    포세이돈 스시





    ~ 𝑻𝑯𝑬 𝑬𝑵𝑫 ~

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短編集〝無限〟 かぎろ @kagiro_

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