話はシンプルだ。姉の恋人と親密になっていく妹の物語。姉はもう亡くなっているが、姉の存在の残滓はまだ色濃く残っている。主人公の妹の心にも、姉の恋人の心にも、家にも――。
そんな中、妹はかつての姉の恋人とドライブして、観覧車に乗る。しかし二人で乗ったはずのゴンドラで、姉の恋人が見ていたものは……。
主人公の妹の視点で終始描かれているが、恋人のふとした仕草や視線などから二人の微妙な関係性がよく描かれている。まるで二人と一緒にいるかのようなリアリティがあり、最後に観覧車のゴンドラと二人のこれからを暗示しているところに感服した。
この作者様のリミタリーアクションものを拝読したことがあるが、現代ドラマ、もしくはホラーもここまで書けてしまうことに才能を感じた。幅広く執筆活動していらっしゃる作者様の今後に期待したい。
最後に、この作品で一番心に残った言葉を書きたい。
「こんなにめぐみ(妹の名)が楽しそうに笑っているなら、この写真を撮ったのが彼だって分かるじゃない」
これが、姉の言葉だった。
是非、ご一読下さい。