大型スーパーマーケットという狭い世界で生きる個性しかないような人々の物語が、主人公の「俺」による少しだけ引いた視点で語られていく。
そんな折、「俺」は容姿端麗な「靴屋の王子」と友人となり、彼の恋模様を見届けることになる。
特にお気に入りなのは、王子が自身の精神的な幼さと向き合い、それを認めて行動に起こすところだ。それまでどこか甘えといったものを持っていた王子が精神的に成長を遂げたのは、読んでいてこちらも嬉しくなる。
王子と「俺」との友情が築かれていくのも、実に爽やかなものだ。
「姫王子」という手強いライバルが登場し、王子の恋路は険しいものになる。
果たして「俺」はどのような結末を見届けるのか。
舞台となる7階建ての大型スーパーマーケットには1階のフロアに靴と化粧品、3階に凝った輸入雑貨テナント、6階に日用品売り場が配置されている。
それは誰の身近にも存在していて、ロケーションを容易に思い浮かべることができる一方で、1日の売り上げは各フロアが閉店時に一箇所へ報告すること、レシートと現物の誤差は五百円までなら面倒なことにはならないことなど、「お仕事モノ」を読む好奇心も満たされる。
同じ場所で働くという浅い縁で知り合った登場人物たちが、その縁を深めていくのか、切っていくのか、切られたりもするのか。
続きを楽しみにしています。