3日目

そして、心を決めて準備を始めてから時が経つのは早いもので、無事、篠栄県立篠花高等学校に合格し入学式を迎える。

あのあと小百合が私を見つけて水脈と言い合いになってお開きになった。

花火の記憶ほぼねぇな…

その後春休みに水脈が訪ねて来た。

その時に知ったのだが、なんと私の住居を初めから知っていたらしい。

だが小百合が許さなかったということがあったそう。

当事者の私のいない間に何してんだよ…

そして本題である入学式。

兄の稟斗のアパートが意外と広いということで同棲することに

「同居だ。」

「心を読まないでいただきたい。」

そして、2人で家を後にする。

会話は特になく、しばらく顔を合わせていない妹に戸惑いを隠せないようだが、それでも私を受け入れてくれる。

素っ気ないようで、不器用ながらも優しさを隠せない、私の自慢の兄だ。

「帰り…どうする?ほら道とかさ」

ほら、こういうとことか。

まさに2次元から飛び出して来たような性格。

「うん、どうせ行き着くとこも一緒だし。

一緒に帰るよ。」

すると彼は目を逸らして聞こえるか聞こえないかの声で

「おぅ…」

と答えてくれた。

そんなこんなで学校に到着する。

「また後で」

結局兄との会話はそれきりだった。

そして桜の花弁の積もった校内に足を踏み入れる。

綺麗な花びらを踏みしめるのはどこか心もとない。

人が歩けばそれが道になる、ね。

人が踏んだ後の桜道を辿り罪悪感を募らせる。

ふと松木さんを思い出す。

桜を見ると思い出す、あの不思議な時間を。

「ほんと、神様の贈り物だね」

「なーにが?」

長い赤髪を2つに束ねたおさげにした少女が飛びついて来た。

年中無休のトレードマークであるマフラーに整った顔を埋めた少女。

桜と相まってより彼女の暖かな雰囲気がじわじわと伝わってくる。

「小百合…本当にここ受けたんだね。」

「みやちゃんがいるからね!」

たまにこの子は私に依存しているだけなんじゃないかと思う。

それでも、自分とだけ親しくする彼女を見ると優越感と不安が私の中で渦巻く。

最低だってわかってる。

でも人間はそういう生き物なんだ。

目の前にいる少女にそんな思いをまたさせるわけにはいかない。

せめて、近くにいる人だけでも守ってやりたい、それが私の自己満足でありちっぽけな正義なのだ。

私の気持ちを知ってか知らぬか、彼女は話を変える。

「そういえば聞こうと思ってだんだけどさ、ここの高校にみやちゃんの仇がいるって聞いたんだけど、戻って来てよかったの?」

仇…?

私が目を丸くしていると、小百合のマフラーを背後からひっぱる人物が現れた。

「ぐぇっ」

と、小百合が素っ頓狂な声をあげたので思わず笑ってしまった。

小百合に今そんなことできるのは1人くらいしかいないだろうから。

「ま、魔王!」

魔王、小百合がそう呼ぶのは水脈だけだ。

「みやび、早かったな。」

こいつ、登場時いつも同じ台詞だな…

美形はどんな背景でも絵になる。

桜景色ならなお映えるだろう。

現に今、私はとても居づらい…

と思ってる間に彼らはコソコソと何かを言い合っていた。

もう日常風景になって来ている、この普通が楽しいのだ。

そんなことを思うなんて私も老けたかな。

話は終わったようで小百合が私を引っ張って体育館に向かう。

その後を水脈がついていく。

いつもと違ったこの立ち位置も、また心地いい。

入学式がはじまる。

そこでは名前を呼ばれたり、入試の成績上位者の宣誓みたいなのがあったり、学校のお偉いさんの話があったり、生徒会長が話をしたりするのだろう。

普通はそんな感じだ。

でも、あくまで普通はの話だ。

ここの学校はいろいろゆるいことで有名だからだ。

学力はそこそこだが何しろ校則がゆるい、との噂だ。

悪行、悪評も聞いたことはなく、態度も悪くはなく、逆に素晴らしいくらいだとマダム方から喜ばれている。

校則がゆるいというのは行事が派手過ぎであったり服装は規定の制服を身につけてさえあればそれで良いなどなど。

生徒達の個性を伸ばそうとした結果、校則がゆるくなったそう。

なんてぼーっと考えたりまどろんでいると

「さとう ゆうや」

と、名前を呼ぶ声が聞こえた。

眠っていた脳が瞬時に目覚めたのががわかる。

え…?

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なんの変哲もない僕らの生活 みゃーび。 @mya_bi

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