二話 最短で強くなる ①

 二度目の転生を果たして、十年が経過した。この世界では、生まれた瞬間に初期ステータスが判明するのだが、やはり前回と同様に、僕の天職は魔術士で、魔力0、魔術適性無しだった。


 それで、今僕はとある一室のベッドに腰掛けている。部屋には、あろう事か今僕が座っているベッドの他には机、椅子しか家具は存在しない。


 だが、家具の代わりと言ってはなんだが、魔道具が沢山散らばっている。床が見えない程に。


 そう。何を隠そうここは、二度目の転生する前に言っていた人──マーナ・ローリクスの生活スペースなのだ。


 とは言っても、今部屋に居るのは僕だけで、その人は僕を置いて、何も言わずにどこかへ出かけてしまった。


 なので、こうしてベッドに腰掛けているわけなのだが、正直暇だ。こうしている間にも貴重な時間は過ぎていっている。


 だから、早く帰って来てほしい──その前に今現在の僕のステータスはこうなっている。


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 ロイ・ティグルス 十四歳 男

 天職:魔術士

 適性:無し

 レベル:1

 【HP3/3】 【MP0/0】

 筋力:3

 耐性:2

 敏捷:4

 器用:3

 魔力:0

 魔耐:4

 ステータスポイント:0

 スキル:無し

 エキストラスキル:昇華倍増 時間効率 

 職業スキル:魔力操作

 スキルポイント:0

 加護:最高神の加護

 称号:神に認められし者 転生者

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 今回は、前回の転生と違って、加護と称号という項目が増えている。どうやら、これらにも、スキルやエキストラスキル、職業スキルと同様に何らかの効果があるらしい。


 何故その事を知っているのかと言うと、最高神の加護の中にある【神の声】のお陰である。


 が、その前に、そもそもこの世界の人間にはスキルは有っても、エキストラスキル、職業スキル、加護、称号というものは存在しない。


 だから、この世界に生まれた人にはステータスプレートと呼ばれる魔道具が配布されるのだが、それにもそれらのものは表示されていない。


 それは僕も同様で、ステータスプレートには表示されていない。なら、何故加護や称号の事を知っているのかと言うと、これも最高神の加護の中にある【神の提示】のお陰だ。


 加護、それによる追加スキル、称号による効果はこうだった。


【最高神の加護】

 エキストラスキルに【神の声】、【神の提示】、【神の導き】が追加される。

【神の声】

 こちらからは干渉出来ないが、神側からなら会話可能。

【神の提示】

 神側から与えられる情報がウィンドウとして表示される。その内容は、使用者で変更出来る。

【神の導き】

 迷宮ダンジョンのマッピング機能有り。ナビ機能もある。

【神に認められし者】

 最高神ネフィが認めた者に与えられる称号。ネフィが無理矢理与えた称号で、称号者は神が異世界に転移する際の座標となる。称号者は常に監視されている。

【転生者】

 異世界では無い世界から転生した人に与えられる称号。稀に不可視な力が良い方向にも悪い方向にも働く。


 加護、称号はネフィが与えてくれたものだろうけど、正直言うと、加護に関してはあまり感謝出来ない。


【転生者】は良しとするにしても、【神に認められし者】は、ダメだと思う。だって、プライバシーが全く守られてないじゃん。


 何? 僕いつも監視されてるの? それに、僕が神様がこっちの世界に来る際の座標になるって何?


 怖いんだけど。この世界に知らず知らずの内に神様がこの世界に転移してるかもしれないんでしょ?


 何で神っていう括りなの? 馬鹿なの? 死ぬの? 神っていう括りだと、魔神族も入ってるって事だよね?


 魔神族は確かに封印されている。だけど、それは地上に転移していた魔神族だけだ。魔界には魔神族はまだまだ沢山いることは分かっている。


 今まで魔神族は地上には干渉出来なくなっていたけど、『ロイ・ティグルス』という保護されていない座標が現れた事により、いつでもどこでも転移出来るようになったという事だ。


 もし、この事に魔神族が気付いてしまえば、この世界は一瞬で破滅する。封印された魔神族も解放され、下手すれば地球にも魔神族の手が及ぶ。


 最後のは最も最悪なケースだが、ありえない事ではない。神様達──女神族、神族もかなりの力を有しているが、魔神族には遠く及ばない。


 昔──今から約一万年程前の人族、エルフやドワーフといった亜人族、女神族、神族は現在の彼らより数倍から数百倍の力を持っていた。だが、実際今現在封印されている魔神族の数は十五と数だけ見れば凄いが封印されているのは最も力を持たない下位の魔神族だ。


 昔の人族、亜人族、女神族、神族が共闘しても倒す事は出来ず、数万の人々の命を犠牲にして、やっとの想いで封印出来たのだ。


 そして、女神族、神族はこのような事が二度と起こらない様、この世界に魔神族が干渉出来ない様にした。


 それからしばらく時間が経ち、昔の人族、亜人族は死に、女神族、神族でも時間という概念には勝てず、生き絶え──現在。


 魔神族の力は圧倒的だと知らない人類が、【叡智の書】によって知った僕しか居ない今、再び魔神族によって地上は危機に遭遇する可能性が出てきてしまった。

 

 これは単なる可能性だ。実際に起こるとは限らない。だが、もし起きてしまえば、今の人類では到底太刀打ち出来ない。


 この事を誰かに伝えても笑い者にされるだけで、まともに取り合ってはくれないだろう。


 つまり、この状況を打開出来るのは、この僕だけだ──と言いたいところだけど、今の僕は最も弱い魔物であるスライムにすら負けるだろう。残念ながら。


 まぁ、今から焦っても無意味だろう。今はその事より強くなる事を考えなければならないのだ。


 しかし、肝心の彼女が居ないんだから、どうする事も出来ないんだけどな。


 

 


 

 


 

 



 

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魔力0の無能魔術士 霜月 紫水 @re0subaru0139

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