一話 女神と二度目の面会
「本当に戻って来るとは思ってませんでしたよ! 拓人さん!」
目の前にこんな事を言いながら、ピョンピョン跳ねている女性がいる。
その女性とは既に一度面識があり、今回で二度目の面会という事になる。
一度目は病名不明の病気にかかり、その病気の治療法は分からず十二歳の時に死んだ時に面会している。
豊かに実った双丘をたゆんたゆん揺らしている女性は信じ難いが女神だ。それも最高位の。
女性の名前はネフィといい、彼女の話だと、今現在、唯一現実世界と異世界の地上に干渉出来、異世界に通じる魔法を全て使う事が出来るだけで無く、武術、剣術、槍術などをやらせても、右に出る者はいないらしい。
更にネフィは容姿端麗だ。銀髪と碧眼を持ち合わせ、どの角度から見ても彼女の体型は完璧で、出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。
それらを包み込んでいるのは汚れ一つ無い純白のドレスだ。彼女の色白な肌と一体と化し、碧眼と薄桃色のリップを塗った唇が良く映え、ネフィの美しさを更に引き上げている。
やはり僕も男の子。僕の視線はネフィの胸に釘付けになっている。これはそう、仕方の無い事だと思う。
でも、ずっと見ているわけにはいかない。
僕は横になっていた体を起こし、ネフィの胸を見るために薄っすらと開けていた目を瞑り、身体に血液が巡るのを待つ。
血液が巡り、意識が覚醒した僕は目を開け、地面に手を付けて立ち上がる。
目を開けて最初に飛び込んで来る物は何も無く、僕が今居る場所は、ただただ真っ白い空間だ。この場に居るのは、僕とネフィだけ。
ネフィは何か言って欲しそうにソワソワしている。僕にはネフィが何を言って欲しいのか分かっているので言ってあげた。
「何で髪型変えてるの?」
「髪型を変えてる理由? ふふーん。それはねー。拓人さんが一番好きな髪型がこれだったから」
「……ふーん。それで、ポニーテールにしてたわけね。でも……」
「でも……何! 早く感想言って!」
「似合ってない」
まぁ、これも僕が今もチラチラとネフィの胸を見ているぐらいに仕方の無い事。ポニーテールが似合うのは黒髪ロングの女性だけなんだから。
確かに銀髪ロングの女性のポニーテールというのも中々味があっていいとは思うけど、やっぱりネフィは髪を括らない方が似合ってるし、僕は好きだ。
でも、僕の為にポニーテールにしてくれたのだから似合ってないとか言って少し申し訳無さを感じ、謝らないと──そう思った時には既に遅かった。
「似合ってなくて悪かったわね。それで、アンタはどうしてここに来たの?」
「……どうして来たのかと問われたら、大切な人を守る為の力を貰いに来たと答えるしかないんだけど」
「そう。ならさっさと選んでどっか行って」
「そうさせてもらうよ」
ネフィはこの通り、先程までとは打って変わって、冷たくなっている。ネフィは多重人格で、一度目の面会の際も、僕がネフィの
だが、今はネフィに言われた通り、スキル二つと職業スキル一つ選ぶ事にする。
僕の目の前には百以上のスキルが羅列されているウィンドウが表示されており、その中には【取得経験値二十倍】や【経験値効率二十分の一】といった成長系のスキルや【叡智の書】などの知識系スキルなど、様々な系統のスキルがある。
前回、つまり一度目にはスキル【時間遡行】、【叡智の書】を、職業スキルには【魔力無限】を習得した。
今回はそれらのスキル、職業スキルは習得不可となっている。が、僕は何のスキル、職業スキルを習得するのか、【時間遡行】を発動する前に決めていた。
僕が今回習得するスキル、職業スキルは、【昇華倍増】と【時間効率】、そして【魔力操作】だ。
【昇華倍増】
レベルアップした際に生じるステータスポイントとスキルポイントが五倍になる。副効果として、鍛錬を積むとレベルアップせずとも身体にはステータスポイントとスキルポイントが蓄積される。ただし、蓄積されたそれらは持ち越し不可でレベルアップした際、必ず取得される。
【時間効率】
このスキルを発動中、鍛錬によって得たステータスポイントとスキルポイントが五倍。そして、体感時間を伸ばすことも出来、最大一秒が千秒に感じることが出来る。副作用として、脳に途轍も無い不可が生じ、長時間使用すると、脳に障害が出る。
【魔力操作】
本来単体では操作出来ない魔力を操作可能にする。
僕の天職は魔術士だが、魔力は持たず、魔術適性も無しと来ている。それは事実で、本来覆す事の出来ない問題だが、それを覆す事の出来る人がいるのだ。
その人に頼れば、多少の魔力を魔術回路を共有して分け与えられるだけで無く、魔術適性が無い僕にでも魔術が多少は使用出来るようになる。
前回でもその人に色々身体をいじられたが、魔術を使用出来るまではいかなかったが、今回は前回とはまるで状況が違う。
が、どう転がるかは分からない。今回も前回と同じ結末を迎える事になるかもしれないが、それは何としてでも阻止する。
そう。何としてでも、だ。
「ネフィ。選び終えたよ」
「そう、遅かったわね。……で、いつまでここに居座るつもり?」
「居座りたくて居座ってるわけじゃ無いんだけど。僕だけではここから出て行くことすら出来ないんだよ!」
「ふーん。で、私にどうして欲しいわけ?」
「分かってるでしょ」
「全然分かんなーい」
ネフィは舐めた口を聞いてくる。絶対分かってるのに僕が言うまでネフィは動かない。
「異世界に送ってください。お願いします」
「誠意が足りないから嫌」
「異世界に送ってください。お願いします、ネフィ様」
「ふーん。やれば出来るじゃない。……これでいいんでしょ?」
僕の足元に魔法陣が浮かび上がった。しばらくすると、魔法陣は光を強め、僕を少しずつ浮上させ、少しずつ高度を上げていっている。
多分、これでネフィとは二度と会う事が無い。だから、お別れの言葉を言っておこうと思う。
「ネフィ、ありがとう。僕を異世界に送って
くれて」
「……」
「やっぱり、ネフィは今の方がいいよ。あっちのネフィも嫌いじゃないけど、僕は今のネフィの方が好きだ。……後、ポニーテールが似合わないとか言ってごめんな。ネフィはやっぱり髪を括ってない方が可愛いし似合うよ」
「……」
「……ネフィ」
無言を貫くネフィの名前を呼ぶ。
「……何よ」
「また、会えたらいいな」
「そ、そうね。ま、まぁ? 私が自ら会いに行ってあげてもいいよ?」
「え? 何? 全然聞こえないよ!」
ネフィが何か言ってるが、ネフィから離れ過ぎており聞こえない。
「もういい!」
やっぱり何も聞こえない。もう、僕の声もネフィには届かないかもしれないけど、声を張り上げて言った。
「ネフィ! また会う事が出来たら、今度こそ僕は──」
『君を救ってみせる』そう言い終わる前に意識が途切れてしまった。
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