第6.5話「神界にて」

雲と青空と太陽が綺麗に映る景色。


足元はガラス張りになっている床の下に、雲が見えるようになっている。


まるで雲の上の天国のような世界。


ここは「神界しんかい」。神々が存在し、様々な世界の全てを司る場所―――




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神界、地球の神々が集まる神殿「サークレット・エリア」。


その建物の一室で、紫乃に力を授け異世界ダーアンファングに転生させた張本人である2人、天照大御神アマテラスとハデスが座っていた。


2人は紫乃が転生後どうなっているか、魔法で空中に映像を映し出しながら観察していた。


「よう撃てたのう…補助してやったとはいえ本当に童の一閃を撃てるとは」


座っていた天照大御神はニヤリと笑みを浮かべながら、座っている姿勢のまま宙に浮き出し、右手の紋章を光らせていた。


ハデスが左手の紋章を光らせながら頬杖をつき、気怠そうに話す。


「力を授かる器があったとはいえ、少し無茶してるんじゃあないか?あの右腕、物凄い痛そうだったぞ」


天照大御神は着地し、頭にある狐耳をピクピクと動かしながら話す。


「でもあの通り、紫乃少年は戦いの中で力のコントロールをしようと意識して動いていたぞ。童の忠告も頭の中に残し、どうすれば自分の身を滅ぼさずに戦えるか心の中でずっと考えていた…とはいえ、最終的には童に助けを求めていたんじゃけれどもねぇ、優秀じゃよ少年は」


ハデスは人差し指を立て、天照大御神の右手の紋章を指さした。


「確かにな…だけど、アマテラさんの五柱の力は恐らく俺の冥府の力より断然魔力が上回ってるし、俺の力と同じように身体能力を上げることも第三の力の…名前は忘れちゃったけど、できるだろ?アマテラさんの力だけの方が許容が効くんじゃ…」


「ハデス君、光と闇の基本を忘れたんじゃなかろうな…」


「…あの……えーっと…何だっけ」


ハデスは誤魔化すように冷や汗をかきながら頭をかく。天照大御神がハデスの目を鋭い目で見つめると同時に、自身の右手を握りしめた。


「光は闇が無くては成り立たぬ!闇は光が無くては成り立たぬのじゃ!童の五柱の力だけでは、紫乃少年は制御できずに“身体そのものを失うこと”だって有り得る。ハデス君の冥府の力で、光の強大な力を全身から爆発するのを防ぎ光と闇の均衡を保つことで力を扱うことができる。だから君を呼んで、ダーアンファングの神々からの要請を共に受けたんじゃろう」


「…すまんな、忘れっぽくて……思い出した」


「……まあよい、少し難しい話じゃからな」


天照大御神が、紫乃が丁度フェリジアと握手を交わしたタイミングで映し出されていた映像を切り、後ろを振り向いて腕を組みながら話を進める。


「紫乃少年なら、あの魔王が世界を支配するための力を得る前に…童たちの力を使いこなし、討伐してくれる。少年の“力”を信じて、童は出来る限りの補助をする」


「…ああ、1つの世界が滅びる危機だ。残念ながら俺はこちらの規則で、アマテラさんのように力の補助することはできない。俺の力は少年の努力次第だ…頼りにしてるよ、日本の神々を代表する始祖神様よ」


ハデスも立ち上がり、後ろに移動し天照大御神の肩をポンと叩く。


「任せておけ…では、童は高天原たかまがはらに戻る。ハデス君は…」


「分かっている。こちらの神々も既に動き始めるよう伝えてあるからな」


天照大御神はこくこくと頷き、部屋の扉を開ける。


「流石じゃのう、ギリシア神話の冥府神」


「どういたしまして…俺も仕事だ仕事」


2人は揃って歩きながら扉の向こうにある光に向かい、飛び込んで消えていった。

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ぼくらの異世界は、アマテラスとハデスと何処までも。 夜野朝都 @yorunod

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