おかえりなさい。

精神障害を抱える五十代の作者さまが、日々のこと気持ちをつづってくださっているエッセイ風の日記です。

文章の感じはとても柔らかく、ひとのこころをひっかきません。
あたたかみがあり、ひとを癒してくれます。
ですが、その裏にはいかほどの苦労や傷、ざらつきがあったのだろうと――言葉のはしばしからそれらを想像して息をのまずには、いられません。

自分は二十代女性で、作者さまとは年代も性別も違います。
作者さまは自分の親の世代にあたります。
世のなか、年代が上だといってもすべてのひとが尊敬できるわけではない。そんななかで、このエッセイの作者さまは人間の先輩としてとても言葉をきいていたく、なります。ひとつひとつつむがれる言葉が、たしかに素直で素朴でもありますが、人間を長くずっとやってこられたかたの熟練したお言葉だからです。

私も、いずれ歳や人生経験を重ねたときにそういう人間になりたい。
顔も名前も知らないひとに、
おかえりなさい、とこころから言える人間になりたいです。


いま、もし。
おかえりなさい、と言ってもらいたいのだったら――いちど、お読みになられては、いかがでしょうか。

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