仮ノ女(かのじょ)

「行ってくるよ」

彼の声で目が覚める

「うん、無理はしないでね...」

弱々しい声を出す

彼が仕事に行ったのを確認して、私も支度をする

彼は私の為に沢山のお金を稼いで来てくれる

でも私にとってはただの都合のいい収入源としか見ていなかった

私は家を出て病院へ向かう

この病院には本当の私の思い人がいる

彼はここで仕事をしている

何時ものように"診察"という形で彼とあう

「患者さん、何処が悪いですか?」

彼はふざけたように言う

「もう、達也さん!二人の時は梨子って呼んでって何時も言ってるでしょ?」

「ははっ、ごめんね、梨子」

彼には申し訳ないけど私は達也さんがすきなのだ

「それにしても彼はかわいそうだよね、重い病気と診断された彼女が、実は軽い病気で、しかも他の男にほれちゃってるんだもん」

そう、少し前までは彼が好きだったのだ

だが診察の時に一目惚れしてしまい、今にいたる

「しょうがないでしょ?達也さんのほうが...かっこよかったんだもん」

私はそう言う。自分に言い聞かせるように

まるで自分自身の感情を押し潰すかのように

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

狂気の罪人 @yorumunkarumun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る