最初に作品タイトルから連想した内容は、泉ピン子主演の「渡り世間は鬼ばかり」。
「鬼嫁」のキーワードから普通に連想するでしょ。でも、これは年配者の発想かも知れない。
読み始めてからは、冒頭で「時代物なのか?」と勘繰り、
2話目からのコメディタッチな点から、高橋留美子先生の「うる星やつら」的な展開を予想しました。
実際は「うる星やつら」よりヒューマンドラマ的で、青年~成人向けの小説です。
成人小説の要素は皆無ですが、大人の読書に耐えうる作品です。
冒頭に振られる数々の謎も、物語の終盤で一挙に回収されます。
非の打ちようが無いほどに理屈が通っています。勿論、ファンタジー物としての理屈ですけど。
ネタバレを避け続けると、本作品の魅力を一つも伝えられないので、
「ヒロインは鬼です!」
と言う事だけ叫ばせて下さい。
ヒロインが可愛い。そして、純真な心を持っている。芯も強い。
きっと貴方(貴女)も好感を持つでしょう。
そして、グイグイと惹き込まれるはず。
彼女に多少ズレている面はありますが、それは御愛嬌。だからこそコメディタッチに仕上がる。
ヒロインに圧倒されて、大概の脇役は「脇役だわな」と薄い印象ですが、
終盤で1人、骨太な脇役の正体が暴露されます。
中盤までは非常に当該脇役の存在感が薄く、そんな展開が効果的に終盤を盛り上げます。
話は変わりますが、作者の別作では、「駅で巡る江戸文化」を読みました。
学芸員の資格取得を目指した方らしい、歴史の蘊蓄に富んだエッセイです。
他にも読んだ記憶が朧にあるのですが、古い作品は掲載リストから外しているのかも知れません。
結局、現在掲載中10作品の内、本作と「駅で」以外の8作は未読なんですが、
私が執筆者を登録していると言う事は、何か過去に面白い作品を読んだからです。
他8作品に関するコメントは出来ませんが、高い確率で面白いと思います。
不慮な事故で両親を亡くした兄弟二人で田舎暮らしを始めるところからスタートします。
兄は高校生、妹が中学生とまだ子供という事もあり、遠い親戚を頼りに都会から田舎へ引っ越しました。
会った事がない分家の親戚ヨシ爺さん。これがまた無愛想なんです。それに子供二人に残された財産の一つが大きな屋敷。
蔵に眠る鬼がいようとは知らずに・・・
冒頭のあらすじを紹介致しましたが、如何でしょうか。
細かい設定が練り込まれているので歴史好きには堪らない描写もあると思います。
人里から離れた閉鎖空間がミステリー要素を含みつつ、温かい人情もあり読み応え満載でした。
基本テイストは明るく楽しい物語で、主人公達の日常が面白おかしく描かれています。
田舎独特の雰囲気が、都会暮らしの兄弟を優しく迎えてくれますが・・・
コメディ路線からガラリとシリアスな展開。更にはホラーのような臨場感をも描き分ける技術は作者さまの真骨頂かもしれません。
もし現代に鬼が蘇ったらどうなるのか。一読推奨の作品でございます。
名家の当主と言えば聞こえはいいが、継ぐことになった結果、やってくることになったのは小さな田舎。
妹と屋敷で始まる新生活。だが、その庭の土蔵には何と鬼がご先祖様によって封じられていた!
封印から解き放たれた鬼は、世の中の鬼が滅んでいたことを嘆き、自分がこの世界を支配して君臨しようと立ち上がる……はずだったのだが、力はほとんど失われ、主人公に夜這いをかけても易々と主人公の妹に妨害される有り様。
菓子を貪り、ネトゲに興じる。勝手気ままな所だけいかにも鬼らしい。ラブコメ路線の物語……と思いきや、何やら不穏な雰囲気も醸し出してくる模様。
鬼娘のスバルを疑問も持たずに受け入れる住民、分家や目付の存在。
そして始まる村のお祭り。
全ては千年前に始まった。歴史と因縁が絡む現代ファンタジー。とくとご覧あれ!