第48話「スキンシップ」

 先輩と朱莉を残し、飲み物を買うべく自動販売機へと向かう途中。

「ね、優介」

 行動を共にしていた七海から、声をかけられた。


「優介とあの人……梔子さんって、どんな関係なの?」

「どんな関係……うーん、友達みたいな感じかな?」


 七海の手前、合コンで知り合ったとは言いにくい。

 しかし、先輩に対して「友達」というのも違うような……そう考えると、僕と梔子先輩の関係って、どう表現するのが正しいんだろうか。


「友達、ね。けどあの人は、優介のことをそれ以上に見てるみたいだけど?」

「あ、あはは……どうなんだろうね。先輩はあんなこと言ってたけど、どこまで本気か分からないし」


 七海は恐らく、この間の喫茶店でのことを言っているんだろう。

 確かに、あの日は僕もビックリした。

 まさか先輩が、僕に告白をするなんて……。


「優介はさ、先輩のことが好きなの?」

「好きか嫌いかで言われれば、そりゃ好きだけど……けど、付き合うとか、そういうのは考えたこと無いよ。そもそも僕は、その……」


 七海と朱莉、二人の告白を無碍にしているんだし。

 それ以上は、上手く言葉に出来なかった。

 だが、そんな僕の言葉を汲んでくれたのか。


「そっか。ならいいの。それならね……」


 と、納得してくれた様子を見せた。



「──すみません、遅くなりました」


 目当てのジュースを持ち、二人の待つ休憩スペースへと戻ると、朱莉と梔子先輩が、何故か少しだけ険悪な雰囲気を漂わせていた。

 ……僕らのいない間に、何かあったのか?


「えっと、先輩はオレンジジュースでよかったですか?」

「……え? ああ、うん」


 考え事をしていたのか、返事のテンポが遅い。

 それに、表情もどこか暗くて。


「梔子先輩、大丈夫ですか? 顔色があまりよくなさそうですけど……」

「ああ、えっと……ごめん、ちょっと私、体調が悪くなったみたいで」

「え、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫。けど、ちょっと保健室で休もうかな……せっかく来てくれて申し訳ないんだけど、ここで解散してもいいかな?」

「あ、はい……。それは全然構いませんが、もしよかったら保健室までお送りしましょうか?」

「ううん、一人で歩けるから平気。ごめんね、また連絡するから」


 そう言いながら立ち上がり、休憩スペースを立ち去っていく先輩。

 大丈夫かな、先輩。


「……ええっと、朱莉と七海はどうする?」


 やがて三人になった僕らは、次にどうするかを考えることにした。

 元々僕は先輩に誘われて文化祭へ来ている。一方で朱莉と七海は、どういう訳か二人で一緒に遊びに来ているわけだ。


「そうね、私はせっかくだしもう少しここにいようかなって思ってるんだけど……優介は?」

「んー、僕もそうしようかな。まだ帰るには少し早いしね」

「じゃあ、一緒に回らない? せっかくだしさ」

「ああ、それは別に……って、七海!?」


 急に七海が、僕の左腕にギュッと抱きついてきた。


「ど、どうしたの急に!?」

「あれ、優介忘れちゃった? 優介が振り向いてくれるように、今度は正々堂々アプローチしていくからねって、前に言ったと思うんだけど?」


 いや、確かにそうは言ってたけども……!


「梔子さんもいなくなったし、いいよね? ね、優介?」

「ええっと、それは……」


 と、困惑していると、隣から身震いをするような空気を感じた。

 隣……つまり、朱莉だ。


「……何してるんですか、七海さん」

「ん? 見ての通りだけど?」

「そういうの、無しって言いませんでした?」

「んー、何のことかな?」


 僕を挟み、言い争いを始める二人。

 ……あれ、この二人、仲直りしたんじゃなかったっけ!?


「……ねえ、お兄ちゃん」

「ど、どうした。朱莉」

「"普通の兄妹"なら、一緒に腕組んで歩いても、おかしくないよね?」

「え?」

「兄妹のスキンシップだから、おかしくないよね?」

「ああ、えっと……それはどうk──」

「おかしくないよね?」

「……うん、おかしくないと思うよ」


 そう答えると、朱莉は空いているもう一つの腕に抱きつき。


「じゃ、行こうか。兄妹のスキンシップをしながら、ね?」


 ……朱莉、それは無理がある気が。



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妹がブラコンであることを兄は知っている。 ミヤ @miya_miya2525

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