BONUS TRUCK「空中庭園の物語Reply」

【1】


目覚めたら、同じ音楽が一日に1回流れる。

猫がそばで鳴いて

空中庭園の住人ははるか楽園を目指して旅だったと

囁く。

僕は待つ。

夜の時間になったら起き上がる、君という存在を待って

ぐちゃぐちゃの記憶を整理しながら


【2】


その時間になったら、

彼女は目覚める。

夜の時間だけしか起きない彼女。

彼女の左半分は鉄でできていた。

その彼女が、手招きをする。

大理石の扉をあけて

空中庭園の深部へと


【3】


彼女は、混濁とした意識の中で

彼の存在を感じ取っていた。

空の民は、遥か過去に

空中庭園を捨てた。

ここには誰もいないはずなのに。

君はいったい何者なの?

君はどうしているの?


【4】

システムは起動した。

加護は、必要としている人のために

ログインさえできれば、

世界は変わる

誰もいなくなった世界であれば、

遠慮の必要はない

生態系を改変して

作り上げるのは新しい世界

半分鉄でできた女神と

少年の手が触れ合って

認証は成功した


【5】

世界は変わる。

その手と手を触れることによって

色が、光が、空気が

一度壊れて、爆ぜて、冷めて、冷え切って

空中庭園が墜ちて

大地と一緒になって

アダムとイヴは

口付けを交わす

原住民の子ども達が無垢な笑顔を浮かべて

龍は飛び立つ

妖精たちは舞う

魔法は掌と掌で光、煌めいて。


これは空虚だった少年が

箱庭のなかで描いた、

空中庭園の物語。

ココから始まる。

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朽ちた空中庭園の片隅で、今日も魔法の歌が擦れて響く 尾岡れき@猫部 @okazakireo

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