気がつくと、主人公の優斗の頭にはヒヨコが乗っていました。
人語をしゃべり、優斗と一心同体になったと自称する、小うるさいひよこです。
はじめは腹の立つひよこだなぁ、と、そういう意味でいいキャラだなぁと思っていましたが、もう、そのひよこ、ドンドンかわいく見えていくんですよね。
語尾がピヨなのが、その語尾の使い方がとことんかわいいです。
果たしてこの、ピヨと名乗るひよこの目的とは?
そして、
偶然知り合った先輩はオカルトマニア。
出会った同級生はワニを背負っている。
という濃いキャラクターが出てきます。
しかし、同級生の有珠杵さんがワニを背負っているのには、なんだか深い事情があるようで……。
淡々と日常を過ごしたいと思っていた優斗が、少しずつ相手に踏み込もうとする気持ちを持っていくところも、興味深いですね。
ところでみなさん、嘘ってつきますか?
嘘って悪いことだと思いますか? 便利なことだと思いますか?
コミカルなお話である一方、それを問われるストーリーになっていて、なかなか考えさせられるお話になっています。
楽しく深いお話です。読んでみてください。
あらすじでは高校生が主人公らしいことが書いてあるのに、
プロローグでは詐欺師が主役となっていて、そこで意表を突かれる方がいるかもしれません。
でもご安心ください。
彼はすぐお亡くなりになって、本編が始まります。
そうして本編。
朝起きると、少年の頭の上にはひよこのピヨさんが乗っかっていました。
ピヨさんはなかなかいい根性してやが……いいキャラクターをしております。
だらけた少年を品行方正にしようと、やたら口出ししてくるのです。
他人事で読んでいる私たち読者からすると、そんなピヨさんの頑張っている姿がめっちゃ可愛いんですよね。
でも少年にとってはウザいことこの上ないので、
どうにかしようと解決策を求めて出会ったのが変人の先輩。
そんなふうに少年は変なやつらばかりに出会っちゃいます。
だけども、人生に対して消極的だった少年を変える歯車が少しずつ動き始めているような、
そんな不思議な感触が読んでいるうちに感じられてきます。
この感触にすごくドキドキするので、是非皆さんにも感じてほしいと私は思うのです。
ところで先述の詐欺師。
彼はプロローグで、嘘がどうたらという理屈を語っています。
きっとそれがこの物語の中核になっていて、
そして少年がその「嘘」についてなにかを発見して成長する――
という物語だと私は思っているんですけれど、
こんな変なひよこと変な人たちに囲まれちゃって、少年は本当に成長できるんでしょうか??
どのように着地するのか、期待で目の離せない物語です。