色覚障害を持つ少女が、その眼に映る世界とどう向き合っていくのか。
幼馴染との純愛や、ある人との出会いを軸に描かれた物語です。
やや強引かなと思える展開があるものの、それを感じさせない描写力は素晴らしいと感じました。
そして、大好きになった一文、「ご縁があったら、またいつか」
see you again の和訳のような言葉ですが、これほどまでに素敵なフレーズを見たことがありません。
作者さまも思入れがあるようで、この言葉をタイトルにした番外編も楽しめます。
タイトルの「カラフリー」
その意味は作中で明かされますが、私は「殻(カラ)」を破って「自由に(フリー)」と感じました。
そんな、さわやかな感動を得られる作品です。
それにしても、年をとったせいか、少女の純愛には涙なしでは読めなくなってしまいました。(^^;)
先天性「一色型色覚異常」で色を視認することができない川口彩美には、世界がモノクロに見えている。だからといって、暗くなっているわけではなく「あたしはそんな自分が大好きだった」。しかし、ある事件がきっかけで、彩美はそのことに負い目を感じるようになり、引っ込み思案になっていく。
そんな彩美を「色のある世界」に導いてくれたのが、彼女が「師匠」と呼ぶ年上の男性だった。
作家である彼は、言葉を使って「色を創造する」ことを彩美に教えていく——。
この作品の素晴らしい点はたくさんありますが、個人的に、特に心を打たれたのはタイトルです。一見何でもないようですが、そこに込められた意味が分かってくると、それだけでもホロリとさせられます。
また、主人公の彩美、師匠、彩美の恋の相手など、登場人物たちもとても魅力的。
読み終わったとき、心に春風が吹くような感動を与えてもらいました。
作者さんがまだ高校生であることも考え合わせ、何らかの賞が与えられるべき作品だと思います。