幽霊なんて、怖くない。

An/餡戸

良い幽霊と、悪い幽霊。

 ――あんたさ。幽霊って、信じてるかい?


 へえ、そう。まあ、どっちでもいいんだけど。

 俺は霊ってやつを見たことがないから、積極的に信じてる訳じゃないんだけど。かといって、そんなのはいないと声高に叫ぶほど信じてない訳でもない。

 ま、要するに。“大抵の人と、同じスタンス”ってことさ。

 だけどそんな俺でも、否定したいことが一つだけある。


 世の中の幽霊って奴はさ。なんで――

 ――人に害を成す存在だと、思われるんだろうな?


 考えても見て欲しいんだけどさ。死んだ奴が別に、生きてる奴に対して悪さをしたいとは限らない訳じゃん。

 そりゃあ世の中には、“良い幽霊”を取り扱った娯楽作品も山ほどあるけど、それだって、悪い幽霊ありきっつーか。

 もうちょっと出てきた幽霊に対して、一方的に怖がるんじゃなくてさ。コミュニケーションを取ろうとしてもいいと思うんだよ俺は。

 ホラー映画とかだと、なんか怨念みたいなのを抱えてる幽霊がやたら多いけどさ。それだって別に、話せば分かり合えるかもしれないだろ?

 なんていうか、どうかと思うよな。幽霊を悪と決め付けるような奴は、多分普段からそうやってレッテルばっかり張っ

「誰と話しているんです?」


 え?


「電話でもしていたのかなと思ったんですけど、そうじゃないみたいだから」


 いや、俺は今ここにいる奴と


「あなたと僕の他、この部屋に誰がいるって言うんです?」


 ――ああああああああああああ!!!!

 誰もいない、この部屋には誰もいない!

 じゃあ、じゃあ。俺は一体、今まで、誰と、


 あ。肩に誰かの、手が、触れて、


 END

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