一人目。ねね。
これからは、私が今まで出会った友達との日々を、紹介していこうと思います。そして、病院内での私のあだ名は「さーちゃん」という事にします。友達の名前も、全て仮名で表記させてもらいます。
最初のお話は、ねねという女の子とのお話。
前のお話で、「可愛らしい少女」と紹介していた女の子です。
ねねちゃんは、母親への暴力、また、友達への傷害でここに来ています。
ねねは私より一つ年下で、最初は同い年と思ったほど大人っぽくて、美人さんでした。でも、見た目とはかなり中身が違いました。決して良いとは言えない言葉遣いに、男っぽい仕草。喜怒哀楽が激しく、見ていて、良い意味でも悪い意味でも飽きない。そんな女の子です。
私とねねは同室で、隣同時のベッドでした。ここの病院は普通の入院病棟とは違い、カーテンがありません。カーテンを閉めれば、同室の子に気付かれず自傷や自殺を図るなど容易いからです。大部屋は、互いが互いを監視しあい、抑制し合うような感じでした。
ねねはいつも消灯時間である9時から、平均して深夜の3時過ぎまでは私を起こして弾丸のように話し続けます。私の事が余程気に入ったのか、24時間私のもとにすり寄って来ては、はしゃいで様々な事をしゃべっているのです。
時には恋の話、時には面白い話、怖い話、くだらない話。ピノキオの様に嘘しか並ばないままで私を少し不機嫌にさせる事もありました。私にひたすら何かを話せとせがんでくるときは、ひたすら数時間ねねにお話を聞かせてあげました。まるで親のように。ねねは、他の子とは違い、精神が疲弊している感じはありません。ただ、自分の思い通りにならないと、死ぬのを確認するまで。または、誰かが止めに入るまで人を殴り続けてしまうだけなんです。
ただそれだけなのに、何故子供には怖がられ、大人には監視され、醜い目を向けられてしまうのですか。心底理不尽な世界に住んでしまったんだな。ねねはいつも笑いながらそんなふうなことを言っていました。
そんなただ元気いっぱいな子供のようなねねに、心を休める場所を、与えられることはありましたが、それ以上に身体的に疲れさせられる事がほとんどでした。子供の世話はこんなに大変なのか、と毎日のように思っていました。
ねねは、この箱庭のような世界に無理やり閉じ込められてしまった子。二重窓の向こう側、音も届かない外の世界に毎日焦がれていました。
ツマレタツボミ 水樹朔也 @ai2002
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