ずれていたけど

突然の少女の言葉に、意味がわからずただ顔を引きつらせながら笑っていると、その可愛らしい少女はぴょんぴょんと跳ねながら顔を真っ赤にしました。

「うわあ!やばい恥ずかしい!これは死ねる!」

「いやあ、完全に出だし最悪だよ、不審者だと思われてるよ」

「ごめんなさああい!あ、じゃあ何部だった?!足速い?!」

意味がわからない。何故「YouTuberがすき?」をやめて、「じゃあ、足速い?」に行くのか。少女は目を輝かせながらこちらを見ています。

「け、剣道部でした…。足は、全然はやく、ないし、ゆ、YouTubeは、よくみます。面白いですよ、ね」

とりあえず全ての質問に答えているみると、少女はとてつもなく嬉しそうに無邪気に喜んだ。

すると、横でいじらしそうにこちらを伺っているもう一人のショートヘアの少女が、にへら、と笑いながら私に話しかけてくれました。

「あの、歌い手って知ってますか?」

歌い手とは、ネットの動画投稿サイトで歌をカバーして投稿している所謂歌手の真似事のようなもので、私はその歌い手が大好きでした。しかし友達には歌い手を知っている人なんて一人もいなかったし、突然のその言葉にすごく驚きました。

「あ、知ってます」

あまりの驚きにじぶんでも引くほど低いテンションで返事をしてしまいました。だけど、少女はおお!とさっきより明らかにテンションを上げて話を続けます。

「〇〇さん知ってます?あと、〇〇とか、〇〇〇〇とか」

「すごい、上手ですよね。好きです」

「ら、ライブとか行ったことはあります?あ、流石に無いか、あははっ。ガチ勢ってなかなかいないですもんねえ」

「あ、行きました。最近も、さっき言ってた〇〇さんのライブですけど」

「えええ!私もそのライブいきました!〇〇さんの事が一番好きで!うわああ嬉しすぎる!」

ショートヘアの少女は、さっきの可愛らしい少女のように跳ね上がりながら私に手を伸ばしてきました。その手をどうしたら良いのか分からなくてじっと見つめていると、その少女は、ぎゅっと私のことを抱きしめました。

うわあ。地元の友達ですらハグなどあまりしてきませんでした。だから、自分に何か大きいものがひっついている、奇妙な感覚に驚きました。

この空間では、建物も、人の距離も、以上と言って良いほど近いんだな。そう思いました

「私も、地元で全然歌い手さん知ってる人いなくて…すっごい、今嬉しいです…!」


それから私は何人かの女の子と、男の子と自己紹介をしながら、久しぶりにたくさん声帯を使いました。

この不思議な空気感のなかで、これから私は生活をします

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