ジャイアント・アニマル・ライフ →通称JAL
ちびまるフォイ
ゴジラが軽くかすむ脅威
「よーし、ポチ。今日もお散歩にいくぞーー」
外に出ると犬小屋に収まっているはずのポチが
もはや車庫にも収まらないほど巨大になっていた。
「ワン!!」
「恐ぇぇぇぇぇ!!!」
その異常現象は世界で一気に起きた。
『ただいま入った情報によりますと、
世界中の動物が10倍以上の大きさになる報告が……うわああ!』
テレビのニュースは生放送中に乱入した猫によりビルが壊される。
猫としては爪とぎしてるだけだが、人間側からしたら恐ろしい攻撃。
山に住んでいる人たちは一斉に避難を開始した。
「みなさん、落ち着いて下山してくださーーい!!
クマはこの時期まだ眠っています!! 今の内に避難してくださーーい!」
犬で大型トラックレベルの大きさになるほどで、
クマレベルとなれば、もはやねぶた祭りの神輿よりも大きい。
巨大化したカラスたちは人間の住居を荒らしてゴミを回収。
近所の野良猫は、人間をネズミと間違えて狩るハンターと化し
亀は移動する山のように風景の一部になるほど脅威になった。
人間たちは太陽の光も届かない地下へと追い込まれた。
「たかが動物が大きくなっただけで、こんなにも脅威になるなんて……」
「おい! このままでいいのか!?
こんなコケのように地下で暮らすのか!?
もう一度、地上を取り返してやろうじゃないか!」
「そうだ……そうだよ! 何をビビってたんだ!」
「行くぞみんな!! 現代兵器の恐ろしさを見せてやる!!」
「「「 おぉーー!! 」」」
屈強な男たちは、武器を手に取り動物に支配された地上へと向かった。
出口に出た瞬間に空からタカがリーダーを取ってしまう。
「り、リーダー!」
「かまうなーー! 害獣どもをやっつけろーー!」
人間の耳からは激しい銃撃音が聞こえた。
目の前にいる巨大なチワワに向けての一斉掃射。
「ワン?」
全然きいてなかった。
反撃のおしっこにより押し流された男たちは、
傷つけられたプライドと力不足を痛感して戦意喪失した。
「よく考えたら……あんなにデカい動物に
こんなちっちゃな銃なんてきかないよな……」
人間サイズで作ったものが数十倍デカい動物に有効かどうかは、
今のサイズを10分の1にした武器が有効なのかを考えれば済む話だった。
その後も、耐巨大生物決戦兵器も開発こそされたものの
動物を撃退するにはあまりに敵が多すぎて断念した。
「みなさん! もう動物と争うのは辞めましょう!
これからは共存していくのです!!
動物が巨大化したのもすべては人間のおごりに対しての
神からの啓示とは考えられないでしょうか!?」
「「「 そうだーー! 」」」
「人類、みな兄弟! 動物みなトモダチ!!」
動物用の決戦兵器がマンモスの数倍デカい動物園の象に
あっさり踏み壊されてから、人間側の方針は変わった。
人間たちはきらびやかな服や装飾を外し、
食事はオーガニックな食品だけをとり、
できるだけ素に近い状態となって、動物たちと接するため地上に出た。
地上は人間がいなくなったことで、
自然生い茂る豊かな地となっていた。
「ニャ~~」
自然豊かな風景を見ている時、教祖の前に巨大な猫が横切った。
教祖はひざをついて祈りをささげた。
「私は動物との共存を求めています!
あなた方もおごった人間への恨みを忘れて、ともに手を――」
「にゃん」
猫パンチを真横から喰らった教祖はどこかへ飛ばされた。
「きょ、教祖ーー!!」
「手を取り合うにも猫は足しかないから機嫌を損ねられたのか!?」
信者たちは慌てふためいていた。
その様子をねこじゃらしのように見ていた猫は信者を……バキバキ(割愛)。
ますます人間たちは地下で小鹿のように震えた。
「あわわわ、動物たちを倒すことも共存することもできないなんて……」
「大変だ! チンパンジーの群れがこっちに来るぞ!」
「ダメだ!! こっちの道は水牛が道をふさいでる!!」
「穴を掘るしかない! みんな急げーー!」
新しい避難口を作って出た先は、
人間の目には山にも見える大きなヒグマだった。
・
・
・
食物連鎖の最底辺へとランクダウンした人間たちは
外敵にびくびくしながらの生活を続けていた。
「あれからもうどれくらいたったのだろう……」
「今じゃ面白おかしく人間を狩る動物もいるらしいよ」
「小動物を虐待するなんて信じられない」
人間たちは、ウサギのように静かな暮らしを続けている。
もう動物たちに挑むものなどいないと思っていた。
「完成した! ついに完成したぞ!!」
白衣を着た科学者がフラスコを持って駆け込んできた。
「博士、いったい何が完成したんだ?」
「巨大化薬じゃよ!! あの動物たちがどうして巨大化したのか、
それをずっと研究していたんじゃ!!」
最初はたくさんいた研究者も動物たちにより徐々にその数を減らし
それでもあきらめずに博士は研究を続けていた。
「おおお!! それじゃこれで形勢逆転できるわけか!!」
「こんなおびえた暮らしをしなくていいのね!!」
「その通りじゃ!! さぁ、人間の力を見せてやるのじゃー!」
人間たちは巨大化の薬を、中に注入するか外にさっと塗るなどして巨大化。
久方ぶりの地上はますます緑生い茂る自然に帰っていた。
かつては「高層」と呼ばれていたビルも、
動物以上に超巨大化した人間にとっては子供のおもちゃだった。
「ククク、動物ども!! 覚悟しろ!!!」
人間たちはかつての尊厳を取り戻すように動物たちを追いやった。
変わり果てた町も整備して、昔のような街並みを復活させた。
動物以上に巨大化した人間に、動物たちはなすすべがなかった。
「見たか!! これが人間の力だ!!
最後に勝つのは知恵がある生物なんだよ!! 野獣ども!!」
※ ※ ※
それから何千年の時が流れた。
博物館には巨人の骨が展示されて、小学生が観賞している。
「はい、こちらは昔の巨人の化石になります。
どうです? 大きいでしょう?」
「すごーい! 今の私たちよりもずっと大きいー!」
「昔の人は動物と戦うために大きくなったみたいです。
知恵も、今の人間と同じだけの知恵を持っていたんですよ」
「そうなんだー!」
「じゃあ、なんで絶滅しちゃったのー?」
「それがわからないのよ。
恐竜みたいに隕石が落下して、食べ物がなくなったのかしら?」
「ううん、ちがうよ。絶滅した理由は同じだけど過程がちがうの」
その中で博識の小学生が顔を横に振った。
「知恵のある巨人たちは、自分たちの力で
食べ物の動物や植物をなくして絶滅したんだよ」
「燃費って大事ね」
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