第2話 はじまりはメールから

やっと退屈な授業が終わり帰りのホームルームが始まったところだった。

みんなこの時間になると疲れからかぐったりとしてる生徒が多く、ホームルーム中に寝るやつもいるくらいだ。この後に部活や習い事や塾に行くやつらを俺は心から尊敬している。だってめんどくさいじゃん、学校が終ったら普通ソッコー家に帰ってゲームやるか寝るでしょ。

あ、でも今日は彼女とデートの日だった。毎週火曜は放課後に彼女行きつけのカフェでおしゃべりデートをする習慣があるのだ。

そんなことを考えているともう帰りのホームルームが終っていた。彼女に早く会いたいからかいつもより手際よく帰りの支度をして速やかに学校を脱出する。

そして走って一足早く待ち合わせの交差点前に行き一通メールを送る。

もうついたよ~と、そのメールの返信を楽しみに待ちながらニヤニヤしているのだ。周りの目なんて関係ない、彼女にさえ良い目で見られていればそれで十分だからな。まあ俺はイケメンだしみんなに見られるのは慣れてるけどね。

するとケータイのバイブが鳴りメールが届いたことをお知らせしてくれた。きっと彼女からの待たせてゴメンのメールだろ、と思っていたが画面を見ると全く知らないメールアドレスからのメールだった。

「だれだコイツ」

思わず口に出てしまった、だってタイトルが「死んでください」ってマジでやばいだろ!!最初は変な勧誘かと思ったけどもし何かの勧誘なら死んでくださいはビジネスマナー的にあり得ない、それに大人がこんなタイトルで送ってくるとも思わなかった。俺はバカなのかこんな怪しいメールに興味をもってしまったのだ。そしてを俺はマジでヤバイメール恐る恐る開いてみた。


死んでください


「はじめまして。私はとある異世界の住民なのですがあなたに会いたい人がいるので転生してこっちの世界に来てください。なのでまぁテキトーに死んでもらえれば勝手にこちらの世界に転生しますから。」


と、こんな内容だった・・・

俺は見た時すぐにわかった。これはいたずらメールだと、誰もこんなメールを信じるわけがないそう思いケータイを制服のポケットにしまおうとしたらまたメールが届いた。


「私はいたずらメールなんか送ってませんよ、本気で言っているんですけどね」


は?!嘘だろ?なんで考えていることがわかるんだコイツは!!つーかマジで誰だよ!!


「私はとある異世界の住人です。名前はありません。好きな食べ物はイチゴです。趣味は体を動かすことですね。」


ふーんイチゴが好きなのか、ってさらっと自己紹介してんじゃねぇぇよ!!

ホントにマジでなんなんだ!!俺の思考と会話しているかのようにメールで返信か次々と届きやがる!!

そして俺は何となくこの怪しいメール主に返信してみることにした。


「俺はこの世界に満足している!異世界かなんだかしらんが俺は死なない!!俺のリア充生活を邪魔するなら許さないぞ!」


と返信メールを送りそれから無視することに決めた。

すると交差点を挟んだ向かいの道から彼女の春乃ちゃんが走ってこちらへ向かって来る姿が見えた。それがたまらなく嬉しい俺はダッシュで春乃ちゃんの方向に向かう。

ちょうど交差点の信号機が青色に変わり渡ろうとした瞬間、ゴゴゴゴ!!というドデカイ地響きとともにとてつもないスピードでトラックが自分の方に突っ込んで来るのが見えた。

終わった・・・これは完全に終わった、俺は死ぬことを理解した。するとアニメやドラマみたいに本当に周りの様子がスローモーションのように見えた。目の前を見ると大きく口を開けてキャーと叫んでいる春乃ちゃん、横の突っ込んで来てるトラックの運転席を見ると大きな口を開けて何か叫んでいるオッサンがいた。

俺はトラックに轢かれて死ぬのか、せめてあと一言だけでも春乃ちゃんと会話がしたかった・・・と最後に春乃ちゃんのほうを眺めていたらトラックがいきなり急カーブして綺麗に俺をよけてド派手にトラックは横転していった。

九死に一生を得た俺は足の力がするすると抜けていきバタッと地面に倒れこんだ。そのあと警察と救急車を春乃ちゃんが呼んでくれて俺は病院に運ばれた。

「ありがとう春乃ちゃん・・・」

「いいの、でも本当によかった!あの時本当に死んじゃうんじゃないかって思ったから」

と泣きながら自分の手をギュッと握ってくれる春乃ちゃんを見て涙が出てきた。本当に生きててよかったと命のありがたさを改めて実感した。

そのあと警察から事情を聴くと、トラックの運転手は飲酒をしていたわけではなく車道の信号が赤に変わりしっかり止まったはずなのに、交差点を渡っている俺を見た瞬間いきなり睡魔が襲ってきて気がついたらアクセルを踏んでいた、とバカみたいなことを言っているらしい。

俺には理解不能だったのでまた後日話し合うことに決めて今日は彼女と帰ることにした。

するとケータイのバイブがまた鳴った。そのバイブ音を感知するまでさっきの事故

のせいかすっかり怪しいメールのことを忘れていた。そして春乃ちゃんに見えないようにこっそりとメールを開いた。


「あなたがこちらの世界へ来ることを拒否するなら仕方ありませんね。ではこちらからアナタを殺しに行って無理やり転生させるしかありません。さっきのトラックはさっそく失敗です。」


「えっ?!」

と一言言葉を発して俺は一瞬思考回路が完全に停止した、頭が真っ白になり目の前が歪んで見えた。これまでに感じたことのないほど背筋が凍っていたことからそれは明らかに恐怖からだとわかった。

まさかあのメールが本当だとは思ってもいなかった。

そして本当に自分が異世界の住民に狙われていることがわかった。

でも俺は絶対にこの世界から消えるわけにはいかない!!この誰もが羨むリア充生活を手放すなんてありえない!!!!!!ふざけんな!!人の人生勝手に決めやがって!しかもまだ春乃ちゃんとはキスもしてないんだぞ!!

もうマジで

「異世界なんかに転生してたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

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俺は異世界転生だけは絶対にしない ばやし @bayshi555

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