ポヲロ、風邪を引く

@stdnt

第1話

 部屋に入ると、ポヲロは悪寒を感じた。風邪でも引いたかな。ヘスイティングスの薬はもうやめようか。

 部屋のなかには大きな机とタンス、帽子かけしかなかった。

 床には、机の上にあったであろう花瓶のかけらと、薔薇の花が一輪、今はもう乾き始めている水の染みがあった。・・・そしてフレディ・マルテンスの死体があった。

 ポヲロは周りを見渡した。壁には窓はなく安物の油絵が二枚かかっていた。

一枚はドアの対面に、裸婦像であった。もう一枚は右手の壁に、こちらには城が書かれていた。

 左手の壁には何もなかった。それにしても(メム・シー)明るい部屋だな。

見渡した限り、「四方」は完全な密室であった。

 今回ばかりは灰色の脳細胞をもってしても、解決が困難かもしれないとポヲロは感じ始めていた。

 そのとき、ポヲロは、自身の頭 -これを機に、本人は増毛剤を隠れて使用するようになるのだが- の上に何かが落ちてきたのを感じた。手にとって見るとそれは、木の葉であった。

 ポヲロは「空」を見上げて思った。

「やっぱり、ヘスイティングスの薬はもうやめよう」と。

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