これは、死んだ俺たちが書く物語

 幼馴染から託されたのは、かつて自分が描いた小説だった。

 社会の荒波に揉まれ、ただ流されるままに生きる青年、雑葉大。
 そんな彼に飛び込んできたのは、幼馴染が書く小説のゴーストライターをやれ、という話。言われるがままに作品に目を通せば、それは彼自身が幼い頃に書いた物語だった。
 巻き込まれるように書き始めた小説――思えば、そこで物語はすでに終わっていたのかもしれない。これは、すでに死んだ物語。
 死んだ「俺」たちが、書く物語だ。

 彼らの描く物語に合わせて、彼らの日常が進む。
 仮想と現実。二重構造で展開される物語は、徐々に軋みを上げていく。
 そこに秘められた歪と謎。それから目を逸らしながら日常は続く。
 この本を完結させるとき、彼は何を思うのだろうか。