Fake8:初デート

ある日、あいつからデートに誘われた。


「せっかく俺ら付き合ってるんだしたまにはどこか2人で出かけたっていいだろ」

「…はぁ」


私は別に行きたくないんだけど。あんたと出かけるぐらいなら家で水谷くんのことを考えていた方がよっぽど有意義だよ。


でもあいつの弱みに漬け込みたい、私がされたように。


「分かったよ、デートしよう。で、プランは考えてあるの?」


考えるのめんどくさいから考えといて、というとあいつはうーんと唸って首を少しだけ傾げた。


「俺はお前が行きたいとこに行きたいんだけどなぁ」

「何それ気持ち悪っ」

「そんなこと言うなよ、仮にもお前の彼氏なんだぞ、俺は」


あんたが何言っても気持ち悪いだけなんだってば。やめてよね、ほんとに。

私が黙り込んだのを見て気まずくなったのか、こいつは制服の袖を捲り始めた。

日焼けした腕が自然と目に入る。お前の腕なんぞ見たくねぇよ。

私が目をそらすと


「お前、俺の腕に見とれそうになっただろ」

「は?私の今の行動のどこを見てそんなことが言えるの?」

「え、顔逸らしたから…」


こいつは困ったように笑う。


でもたまにはこいつに優しくしてやることも大事なので、私は優しい言葉をかける。


「まぁ…あんたの腕は男らしくてカッコイイと思うよ」


するとこいつは笑顔になって、


「お前、ほんとツンデレで可愛いなぁ」


なんて言ってくる。キモッ。


「で、結局デートプランはどーすんの」

「だから、お前が行きたいとこに行くってば」


行きたいとこ、と言われても特にこいつと行きたい場所なんてない。

水族館に行きたいけどこいつと行くぐらいなら澪とか誘って行くし。


「いいから、行きたいとこあんだろ?顔に書いてあるよ」


こいつが優しく私を催促する。

ああもう、じゃあ適当に…


「この前出来たばっかのテーマパーク。あそこ連れてってよ」

「それって…ワンダーパークか?」

「そうだよ。そこ以外ないじゃん」

「そ、そうだよな…いやぁ参ったな…いきなりそんなデートっぽい場所言われるなんて…」

「嫌ならやめよっか」

「いや、そうじゃないって!ただ…ちょっと嬉しかったんだ、そんな所に俺と一緒に行きたいって言ってくれたのが」


頬なんか掻いて、こいつ、照れてんのか?


でも私は、一瞬、ほんの一瞬だけ、こいつにキュンとしてしまった。

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Fake and Fake Chica Sunny @rarechan

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