読み始めた当初は、オムニバス形式で進んでいくのかと思いきや、こちらはアペリティフであったか。
1本しっかりとストーリー仕立てになり、エピソードごとにお酒が紹介される締め方も、軽快でテンポ良く、実に連載向きだなあ、と最後まで読ませて頂いた。
作者様の他作品を読んでいれば、なるほど、あのキャラクターの過去はこうなっていたかと下地も分かるので、2度美味しいと言えよう。過去もあって今がある、人生もお酒も熟成されていくものだから。
音楽を傍らに、お酒をお供に、恋や夢が、輝いて見える。叶うことなく、紆余曲折し、たとえ傷付き、破れようとしても。
ビター&スパイシー。
人生は続いていく、そんなカクテルでも飲み込んで、明日へ進んでいこう。
そう思わせてくれる、素敵な作品でした。
別作品『J moon』に登場する印象的なバーテンダー優のビフォーストーリーです。
クラシック音楽を勉強していた音大生の優がジャズとカクテルに出会い、さまざまな経験をしていきます。
優の物語にはカクテルがいつもそばにあります。時には切ない恋があったり、羨ましく思える友情があったり、また楽しく家飲みしているシーンなどはまるで自分も仲間に入っている感覚を味わえます。
作者さまの『J moon』や『ジャズテイストで行こう!』をご存知の方なら彼の若い頃の話は興味津々だと思います。
これらの作品をお読みでない方には本作品を堪能してから時系列順で『J moon』へお出かけになるのもオススメです。
毎話、毎話物語を楽しみながら、きっとバーに出かけてみたくなる。カクテルを飲んでみたくなる。自分でも作ってみたくなる。
バーやカクテルというと、オシャレすぎて敷居が高いと思いがちですが、この作品は「肩ひじはらずに楽しんで」と語りかけてくれているようです。
そんなオシャレで美味しい物語にあなたも酔ってみませんか?