第2話

 古ぼけたアパートだけれど、どうやら家具はひと通り揃っているみたいだ。

 埃っぽいのとボロいのを除けば、過ごしやすそうな配置にそれぞれ工夫されている。

 あと、幽霊の鴎という男が居るのもいただけない理由に含まれている。が、これは除外しよう。どうしようもない事だ。

 いわく付きの物件なのを承知で、私はここに決めたのだから。

 家具を揃えるお金を使わなくて済むのは、有難いことと受け止めましょう。この際仕方ありません。


「だからって……、気が休まるわけじゃないけど」

「何か言いました? 水鳥さん」

「いえ、何も」


 重たい沈黙が私の心にさらに、ずしりと負担をかけてくる。けど、鴎くんは。

 あぁ……幽霊の彼に呼称をつけるなんてどうかしてるわね、私。

 それに、さらりと名前呼びをしてくる鴎くんもどうかしてるよ。ほんとにこの幽霊は地縛霊なのかな? 今までのと違って、ねちっこく痛いだの苦しいだの、殺してやるだとか言ってこないからこっちは困惑してしまう。


「あ、喉が渇いてるのでしたらそちらに前の住人が置いていったインスタントコーヒーがありますので」

「あ、お構いなく」


 なんなの? この地縛霊! 意味わかんなくて逆に怖いんですけど!

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草臥れ幽霊の鴎くん 山波 @yamanami00paradise

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