第7回 小説を書いてみる
さて、いよいよ本題。『小説の書き方』について解説していきます。
書き方は人それぞれなので「これが絶対正しい!」と呼べるものは無いのですが、基本的な小説執筆の流れとしては
①ネタ出し
②主題や起承転結を考える
③ハコガキ
④プロット
⑤清書・訂正
があります。いきなり清書からやり始める人もいればネタ出しや起承転結を頭の中で考えながら書く人もいますが、慣れないうちはこの五つの順にやると脱線が少ないので安定したクオリティで書くことができると思います。
それでは前回までの内容を踏まえつつ小説の書き方を解説していこうと思います。
①ネタ出し
小説を書く上で一番最初にやらなければいけない作業であり、書いている間もずっとやらなければいけない作業です。
こう書くと何だか小難しい作業の様に思えるかもしれませんが、内容自体は「ここはこんな話にしたい」「このキャラはこんな感じにしたい」「この世界はこういう設定にしたい」という趣旨の事を思い付くままどんどん出していくだけの簡単な物です。
思い付いた事は忘れない様に、また整理しやすい様にメモやノートに纏めておくのがおすすめです。
第四回で英語で突っ込みを入れるといった事を話しましたが、これは主にネタ出しの段階で大いに役立ちます。
一つのネタを思い付いたら、そのネタに対して「What(何が)」「When(いつ)」「How(どうやって)」などの突っ込みを入れて、自分なりの回答をノートなり何なりに書き込んでいってください。
その回で似たような事を前述していますが、その解答が新しいネタになります。そういった細かいネタの積み重ねがストーリーを作っていきます。ネタを書き終わった後は主題や考えているストーリーの展開と照らし合わせながら使うものを選びましょう。
思い付いたものを思い付いただけ放り込んでいるとどことなく粗雑な感じになるので注意して下さい。
②主題や起承転結を考える
ここからがストーリーを作る上での第一歩です。ネタ出しは準備運動ですね。
まずは主題。「これはこんな話です」というのを、できるだけ一文で纏めれる様に考えてみて下さい。ざっくりでいいんです。多少大雑把でも大筋が決まっていると次の起承転結を考えるのが格段に楽になります。
次に起承転結を考えます。起承転結については第二回で詳しく説明したのでここでは詳細を省きますが、「何故『起』パートから『結』パートになったのか」を考えると『転』パートが考えやすいです。そして「何故『起』パートから『転』パートになったのか」を考えれば、あっという間に『承』パートです。
この書き方だと分かりにくいので、有名な作品『シンデレラ』で例えましょう。
言うまでも無い一般常識だとは思いますが、シンデレラの『起』パートは「シンデレラが継母と義姉達に虐められている」ところですよね。そして『結』パートは「シンデレラが王子と結婚して幸せに暮らす」です。
ここだけ切り取ってみてみると全く繋がりませんよね。「え? 何でシンデレラ王子と結婚してんの? 序盤の生活isどこ?」みたいな感じになると思います。
ではその「何で王子と結婚してんの?」という突っ込みをこの二つに入れてみましょう。皆さん答えはご存知ですよね、答えは「シンデレラがパーティーで王子と出会い、魔法が解けたシンデレラを王子が探し当てたから」です。これが『承』パート後半から『転』パートにあたる部分です。
しかしここでもまた「はぁ? 魔法? 魔法って何ぞ?」という疑問が出る訳です。シンデレラは物語開始時点ではちょっとお金持ちの家にいる、不幸な生活を送っているとはいえ特に何も特別な力は持たない普通の女の子。それが魔法とどう繋がるのかは先の展開を知らないと絶対に分かりません。
その疑問を『起』パートと『転』パートに放り込んでみると、答えは皆さんご存知の通り「空腹の魔法使いにスープを振る舞い、そのお礼にかけて貰った魔法」です。これでパーティーに行きましたね。
これでざっくりとした
①シンデレラが苛められている
②シンデレラが魔法使いに魔法をかけて貰いパーティーに行く
③パーティーで王子と出会うも別れてしまい、王子がシンデレラを探す
④王子がシンデレラと出会い、結ばれる
という起承転結ができました。これに「何で虐められてたの?」「何で継母や義姉ではなくシンデレラが選ばれたの?」「何でシンデレラは一度王子と別れたの?」といった疑問を入れて、それに対する解答を足して行けば自然とハコガキやプロットへと繋がっていきます。起承転結もメモ等に残しておくと確認しやすいですが、デジタルでのメモ帳ソフト等を使った方が足したり消したりしやすいのでおすすめです。
③ハコガキ
前にも説明した通り、プロットの設計図です。②で決めた起承転結に①で出したネタを「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「何のために」「どうしたか」の5W1H(When/Where/Who/What/Why/How)を明確にしながら箇条書きにしていきましょう。
「○日目の朝・通学路・主人公・通学路を歩く・学校に行く為に」くらいバラした後で「○日目の朝、主人公が学校に通う為に通学路を歩く」くらいに再構成した方が後で分かり易いかと思います。
先に上げたいつどこで云々のところが明確になっていると、プロット作業が楽になります。
・○日目の朝、主人公が学校に通う為に通学路を歩く。
・歩いている最中に、主人公が曲がり角で走ってきた女の子とぶつかる。
・女の子が転び、主人公が助け起こす為に手を差し出す。
みたいな感じで書いていくのが私のやり方ですが、本来のやり方的にはノートのページに縦横のラインを引いて分割して、「時間」「人物」「場所」の様なブロックごとに纏めていくのが正しいです。
本来のやり方の方が見やすいですが少し手間なので、デジタルでやる人は短めの文章でまとめる方がやりやすいのではないでしょうか。
④プロット
何度も書いている通り、小説の下書きです。③までで練った構成を、まずは一度全て文章に起こしてみましょう。この段階では書き方やら表現やらは全く気にする必要はありません。尺や整合性も気にしてはいけません。それは⑤の清書での作業です。
多少気になるところがあっても気にしないで書き進めていくくらいでなければ、書いては直し書いては直しがずっと続くばかりでいつまで経っても作業が前に進みません。まず最初から最後まで書き切りましょう。
一度書き切ってから直すのと直しながら書くのとではまるで速さが違います。それに直しながら書くと余計なアイデアや表現を足してしまって整合性が崩れることもあります。これでは構成を練った意味がありません。全て台無しです。
なのでまずは構成をなぞる様に、構成を小説という媒体に全て流し込んでください。そして構成を全てプロットの中に収めてから、表現や手直しを加えましょう。この段階では何も考えず、どちらかと言えば機械的に書いた方が雑味が無い感じになります。
⑤清書・手直し
これが最後にして一番時間のかかる作業です。ささっと纏めたプロットを自分のやりたい表現にどんどん訂正していって、自分の物語に変えて行ってください。
捻った会話や話を盛り上げるシーンの描写、いらないシーンを削って重要なシーンを長くする緩急等はここで行います。プロットの段階での誤字脱字もここで確認して適宜訂正していきましょう。
考えた設定や構成の段階では入れていなかった小話・演出なども整合性の取れる範囲で入れていくといいと思います。ネタ出しの段階で考えたネタはここに入れていきましょう。
その時のネタは①で書いたように、主題や構成を乱さないか考えて選んだ上で入れていくといいと思います。
清書した作品は何度か読み直しながら手直しを加え、今後の展開の伏線や物語全体を通してのテイスト――悲劇や喜劇など――の通りに味付けし直しましょう。この作業を自分の中での違和感がなくなるまで繰り返し、これでやっと一本完成です。
どうでしょうか。やる事の一つ一つは簡単……とはいえ、全体を通してみると結構面倒臭い作業に見えるのではないでしょうか。
ですがこれは「書きながら考えて書く」という初心者が陥りがちな非効率的なやり方を、なるべく効率的になる様に分けただけです。
書きながら書くと言うのは、私が今までに書いた事を全部同時にこなしながら進めなければならないのです。とんでもなく時間がかかる上に、一つ一つの詐欺様のクオリティも落ちてしまいます。
ネタ出しはネタ出し、プロットはプロットといった風に作業を一つ一つ分けて丁寧にこなしていった方が結果的に良いものを書きやすい上に時間も短く済みます。「ながら」でやるのが個人的には一番駄目ですね。
さて、この回で「小説の基本的な書き方」の説明は終わりです。
基本的な書き方というのは言ってしまえば枠組みの様なものです。この回まで読んで小説がもう書けるというのは中身がそろっている事前提です。しかしその中身も、組み上げた枠の中にきっちりと納まる重厚なものでなくてはいけません。
薄い物語というのは全く心に残りません。読者の感想が「あー、やっと読み終わったなぁ。で、どんな内容だったっけこれ?」ではクリエイター側からすると悲しい気分になると思います。私は悲しいです。
そんな事にならない様にする為に、次回からは中身を重厚にしていく為にやらなければならない事について説明していこうと思います。
次回は物語を厚くする為に何よりも必要なもの、設定について解説します。
エンタメ小説の書き方 楪葉奏 @kanade07
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