今年読んだ中で最も残酷な物語、という賞賛。

拝読しました。
「才能」とは何か。秋永さんのおっしゃる通り、それは視えないし、さわれないものです。だからこそ、局面によってはハッタリや思い込みでやり過ごしてしまうことができる。
しかし時に、自分の才能じゃ勝負にならないモノとぶつかってしまう時がある。ハッタリが唯一、通じない相手は世界で一人、自分自身ですね。
そして正直に告白すると、読後に私はこう思いました。もし自分にその時が訪れたなら森島章子の役回りで居たいと。自分の残酷さと対峙させられた思いです。
商業でも書いておられる秋永さんは、きっと森島さんの役回りも、新井さんの役回りも、両方経験されたことがあるのでしょう。だからこそ新井さんは自分を諦めず、昨日よりちょっとでも先に進む選択をする。
北村薫氏は「本当にいいものはいつでも太陽の方を向いている」と言いました。秋永さんの小説も、そしてきっと作中の森島さんの写真も、力強く太陽に向いて、後から来る人たちに正しい方角を示しているのだと思います。

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