エピローグ

エピローグ

エピローグ あるいは魔女の庭の事情について


 魔女は庭を耕していた。森の合間の、日のよく当たる開けた場所で。


「はっはっは、こんにちはお嬢さん」

 何かを激しく勘違いした男が、白馬に乗って通りがかった。

 魔女は目元に皺を生み出し、険しい声で、呪うぞ、と警告した。

 男が無視をして話続けたので、魔女は、一撃で奴を呪ってやった。

 馬が、変貌した主を引きずりながら駆けていく。

 数日後、似たような事件がまた起こった。数ヶ月後も。数年後も。

 魔女は、庭に人が立ち入るたびに、入らないようにと忠告する。だが、無視する輩がとても多い。

 この国ができるよりも以前からここに住んでいる魔女は、そのことを本当に腹立たしく思っていた。


 ところで魔女の庭は、森の狭間にある。

 獣道が、人が通るうちに広がって、今では魔女の庭に隣接している。魔女を恐れる者は迂回するが、よそ者は気づかずに入り込み、たびたび呪いの標的となった。

 そのことに気がついたのは、魔女の住む森を統括するエバロウ国の王、ジークフリートの、妻である。

 妻の気づきを受けたジークフリートは、一計を案じ、この先魔女の住まいあり、迂回せよという、きわめて簡潔な立て札を、配下の者に立てさせた。

 こうして、魔女の預かり知らぬところで、危険要因が減らされて、魔女はいちいち目くじらをたてる必要がなくなり、ずいぶん、穏やかな日々が続いている。


蛙の王子と魔王の花嫁~魔法の城~・了

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蛙の王子と魔王の花嫁~魔法の城~ せらひかり @hswelt

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