第2話 未知との邂逅

喫茶店のやり取りから数日が過ぎたある日。廊下をクロナを含む者達が埋め尽くさんとするほど走っていた。廊下自体が狭いため、人数はそこまで多くはない。一部の者は壁や天井を伝っている。

廊下の脇に立つ連絡係が叫ぶ。

「緊急、敵コロニー内14-2、敵の種類不明、戦闘班準備!」

14-2だって?食糧庫だろうか。何故敵はそんな所に来たのだろうか。それともただ迷い込んだだけか...

コロニーは迷宮のような作りになっているため、すべての部屋を把握することは困難であり、部屋番号からはおおまかな場所しかわからない。

クロナが敵について思案を巡らせていると、切り裂かれた仲間の残骸が転がっている様子が目に飛び込んできた。敵が近いことを察し、音を殺して更に奥へ進む。

周囲には先に来た仲間達の姿はない。

一緒に来ていた仲間達はそれぞれでチームを組み、ばらけて敵の捜索に当たっていた。

クロナは1人だった。コロニー内において「変わっている」クロナは少し浮いた存在であり、わざわざ一緒に行動しようとする者はいない。あえて言うならパラポだけだ。しかし、クロナの戦闘力は他の仲間より高く、大抵の敵はどうにかなる。本人も自分の腕を過信とまではいかないまでも自信はあった。

仲間の残骸がとある部屋に続いている。部屋の前まで来ると、標識には孵化室と書いてある。クロナはスライド式のドアを少しづつ開け、慎重に中を覗くとそこには驚くべき光景があった。

仲間達の残骸が床に転がる中、立っている者が1人いた。そいつは顎の大きさと色が若干茶色係って違えど、クロナ達と同じ姿をしていた。

俺達と同じ姿をしている???

衝撃を受けたクロナの頭には様々な考えが巡っては消える。俺達の仲間?いや、流石に違う。その敵は卵を担いでいた。裏切り?そもそもこんな姿の仲間はいないだろ!つまり、未知の生物...敵であるのは確かだな...

開いたドアに気付き、敵はクロナの方を向いた。

「お前も死にに来たのか?」

特に考える素振りもなく話す敵には余裕が感じられる。同族を倒し、俺達が力でかなわないと確信しているのだろう。間違いなくこいつは強い!

実際、クロナ1人で戦っても勝てる見込みは薄かった。

クロナは自分から攻撃を仕掛けるには愚策であると考え、まずは情報収集に徹する。

「それはこっちの台詞だ!ここは我らがコロニー!そこを侵略して死にに来たとはよく言えたな!!コロニーを乗っ取りに来たのか!?」

「違う...。見てわからぬか愚か者め。」

そう言い、担いでいる卵を揺らす。

「食料とする気か!野蛮人め!」

「食料だと?生憎食料は間に合っている。貴様らなど食いたくもないわ。こいつらは...労働力だよ」

「労働力だと!?俺達のコロニーに侵入する危険を犯してまで労働力が欲しいというのか!?」

「それが、我らサムライの定め、習性、自然の摂理だ。」

クロナは思案する。サムライそれが名前か?習性、自然の摂理とはなんだ?こいつらはコロニーの外から来たということは、俺の知らないこと、「この惑星の在処」について知っているのだろうか。しかし今はそんな知識欲を抑え、目の前の強敵へ意識を集中させる。

だが、サムライは襲ってくる気配もなく話を続ける。

「お前は他のやつらみたいに襲って来ないのだな。コロニー暮らしの奴らは物事を知らない傾向にあるというのに。まぁこれだけ数がいれば変わった奴もいるか。貴様は感情ではなく、理性で行動できるようだな。ならばお互い命を懸けて戦闘する必要はあるまい?」

サムライは角をピクピクと動かし仲間へ合図を送ると、クロナに背中を向ける。

クロナにとって相手に攻撃する絶好の機会であったが、、、動けなかった。いや、動く気も無くなっていた。卵を攫われてもコロニーへ害があっても、クロナには全く影響がない、それを頭で判断してしまったためであった。他の仲間なら考えずすぐに噛み付きに行っただろう。やはりクロナは変わっていた。


そのままサムライが立ち去ろうとした時、横から聞き慣れた声をあげて突進してくる者がいた。








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この惑星の在処 エジソン @edidon

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