この惑星の在処
エジソン
第1話 生まれながらにして
宇宙には様々な惑星と、多種多様な生物がいる。
チャールズ・ダーウィンは言った。
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。」
「唯一生き残れるのは変化できる者である。」
俺は生まれながら戦士だった。戦うことが仕事だ。コロニーの近くに出現する怪物を倒している。一人で倒しているわけではない。基本は仲間と協力して狩るのだ。俺達の武器は強靭な顎だ。これで敵の四肢を噛み千切ったり、羽に穴をあけたりする。更に生まれつき力持ちであった。頭には角もあり、仲間の位置や匂いを正確に把握することが可能だ。細く、するどい手足(手として、足として使用できる四肢)が6本あり、どんな地形・足場にでもしっかりと踏ん張ることができる。尾部は楕円形でここには栄養が詰まっていて、飲まず食わずでも数日は生きれるだろう。戦士だからこのような体つきをしているわけではない。子供の世話をする者、コロニーを拡大する仕事をする者、皆一様にしてこの姿、そして全身黒色だ。
カランカラン。ドアをくぐり店内へ足を入れる。
「はいいらっしゃい。おっと!今日も浮かない顔だね。」
クロナはカウンター席についた。他に客の姿はない。
「ははは、ちょっとね。」
そういうと、ノートを取り出し右上の手足でペンを握ってメモの続きを書きだした。
コロニーとは俺達が住む地下施設のことである。住居地区・食料倉庫・子育て地区・そして王の部屋などがある。コロニーから地上へ出ることはできるがあまり遠くへは行けない。それは敵に襲われるからだ。敵とは私達以外の生物を指すが、一部の別の生物とは共存している。喫茶店のマスターであるアブちゃんなどがそうだ。アブちゃんは手足(手として、足として使用できる四肢)が6本で全体に丸みを帯びた形で色が緑っぽく、私達とは完全に異なる形状をしている...
そう記載していると不意に頭の上から声を掛けられた。
「まーた哲学か!」
ビクッと反応し、飲んでいた甘いドリンクを少し噴き出した。天井を見上げるとパラポが張り付いていた。
「脅かすなよ!」
パラポは不思議な奴だ。自分でいうのはあれだが、俺も仲間の中ではかなり異質であると自覚している。しかし、そんな俺の話を聞き、相談に乗り、興味を持って接触してくるパラポも不思議と言わざるえない。そして何より...感でしかないが「パラポはすべてを知っている」そんな気がしていた。
「脅かそうとしてるからな。それで今日は何を考えていたんだ?」
「コロニーの外の世界について考えていてな。まず、身の回りのデータを整理していたのさ」
パラポは天井からシュっと床に降りた。
「ほぉほぉ、相変わらず面白いやつだな。で、どんな感じさ?」
「俺が思ったことは..俺はそもそも誰のために働いているんだ?」
「誰のためって、王のためだろ?」
「その王なんて見たこともないし、戦士が関わることなんてないだろ。俺達はただ働いて死ぬそれだけなのか?一度きりの人生だぞ!何故誰も不思議に思わないのだ?」
「私が答えを知っているとでも?」
こういうやりとりがなんとなく「パラポはすべてを知っている」と思わせる原因だ。
「ああ。」
「ははは!私はそんなに賢くないよ。」
これ以上、本当は知っているだろ?などと追及しても無駄なことは分かってため何も言わない。
「いやはや、クロナは本当変わってるな。変わってる。」
少しの沈黙の後、つぶやく。
「変わってるか。まぁ、話す気になったら教えてくれ。この世界の在処を...」
クロナはそう言い残し、ドアを開け喫茶店から出て行った。
一人店内に残ったパラポは寂しそうな声でクロナに聞こえない返事をした。
「だから...知らないって」
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