走れセリヌンティウス

作者 たらこ

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★★★ Excellent!!!

太宰治の『走れメロス』の二次創作なのですが、たとえ原作を読んでいなくても、単体で楽しめるクオリティです。

親友メロスの代わりに磔にされているセリヌンティウスのもとに、別の親友ガイウスの危篤の知らせが。
セリヌンティウスは、ガイウスのもとに駆けつけるべく、もう一人の親友ルクレティウスを身代わりに、走るのです。

しかし、セリヌンティウスの行く手には様々な事件が…。

ほら、普通に面白い(笑)

原作の文体や関係性、そして「友情」というテーマを損なうことなく、見事に創作しています。
なので、原作ファンの人は大いに楽しめると思います。ニヤリとさせられる場面もあります。
しかしもしかすると、原作のメロスの勝手さにイラっとした人にこそ、面白いのではないか、とも思います。
親友セリヌンティウスの命を質に、「別の大事なこと」のために走るメロス。
しかしここではセリヌンティウスもまた、「別の大事なこと」のためにルクレティウスの命を質にしているのですから。
男たちは、それぞれの身勝手さと、誠実さを胸に走ります。
その行く末は…。

是非、読んでみて下さい。

★★★ Excellent!!!

 古典文学やライトノベルの二次創作は数あれど、近代文学ものでは珍しいので読んでみたのですが……予想以上の完成度にまず驚かされました。これ、普通に太宰治の作品の隣に置いていいんじゃないでしょうか。
 友のために走るという、原作のシンプルな展開を踏襲しつつ、辿り着いた町で遭遇する人々とやりとりをかわし、それゆえに葛藤する展開が秀逸。オリジナルでありながらも原作を尊重し、その空気をそのまま移した完成度の高さは、どんな読者も一気に作品の世界へ引き込むこと間違いなしです。