*最新話【ファンタジー・童話系】
パンダのルカと不思議な絵本
ある日、パンダのルカが森の中を歩いていたら、不思議な本を見つけました。その本は、赤い革のカバーで飾られており、縁取りには金色の細工が施されています。表紙の中央には、小さな家や木々が描かれていました。古い絵本のようで可愛らしい雰囲気が漂っています。
「ルチェッタ、この本面白そうだよ!」
ルカは、ルチェッタが座っている切り株の所まで来て言いました。
ルカはルチェッタが拾ってきた本に興味津々でしたが、「あれ? 絵が無いんだ?」と絵がないとつまらないと思い、本を閉じてしまいました。「でもこの本、不思議なんだよ」
ルカは言いました。
「どんなふうに不思議なの?」
ルチェッタは聞きましたが、ルカは首をかしげてキョトンとした顔をしただけでした。
ルカは草笛を吹き始めました。ルチェッタはルカの草笛に合わせて、落ちていた枝を2本持って本の表紙を叩き始めました。
すると、不思議なことが起こりました。本当は絵本の中で幸せに暮らしていた小人や妖精や動物たちが、ルチェッタ達のいる森の中に少しずつ姿を現し始めたのです。
ルカは草笛を続け、ルチェッタは枝を使って、小人や妖精や動物達も一緒に音楽を奏でました。すると、虹色のアゲハ蝶と追いかけっこをしていた緑色の靴下を履いたキツネの子供が、絵本の中へと帰るための小さな入口を発見しました。
フルートを吹いていた妖精が、ルチェッタにもっとテンポをあげるように言いました。すると、入り口がどんどん大きくなって、みんなが通れるようになりました。
「ありがとう、ルチェッタ、ルカ。あなたたちのおかげで、私たちは絵本の中へと帰ることができます」と、小人たちはルチェッタとルカに感謝の気持ちを伝えました。
そして、小人たちや妖精や動物たちが絵本の中へと帰っていくと、森の中には風が吹き、木々が揺れ動き始めました ―――――
「おじいちゃん、面白いお話ありがとう!」
ルチェッタは大きな笑顔で、ぬいぐるみのルカを抱きしめました。
花や木々が植えられた庭の中央には白いテーブルと椅子が置かれています。そこで、ルチェッタの祖父であるセルジョは、孫娘のルチェッタにせがまれて物語を作って聞かせていたのでした。
セルジョは嬉しそうに笑い、ルチェッタの頭を優しく撫でた後、テーブルに置かれた大麦のコーヒーが入ったカップをゆっくりと持ち上げました。新緑をまとった木々も、優しい風に撫でられていました。
400字くらいからのショートショートや掌編や超短編 千求 麻也 @chigumaya
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